第1回市場問題プロジェクトチーム議事録

平成28年9月29日(木曜)
都庁第一本庁舎7階大会議室

午後1時00分開会

○事務局(池上) ただいまより、第1回市場問題プロジェクトチーム会議を開催いたします。
 本日の会議の議事進行を務めさせていただきます、市場問題プロジェクトチーム事務局の池上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は多くのプレスの方に来ていただいておりますが、本日の会議の様子は、最初から最後まで公開しますとともに、インターネット中継も行ってまいります。
 続きまして、本日の配布資料の確認をさせていただきます。机上に置かせていただいていますが、順に、本日の次第、出席者名簿、配席図、会議資料6点。会議資料1「小池知事記者会見資料」、資料2「市場問題プロジェクトチーム設置要綱」、資料3「豊洲市場の経緯年表」、資料4「豊洲市場配置図」、資料5「築地市場配置図」、資料6「検討事項(案)」です。
 何か不足等がございましたら、事務局までお声がけください。
 議題に入ります前にプロジェクトチームのメンバーをご紹介したいと思います。順にご紹介しますので、その場でご起立の上、一礼のほどお願いいたします。
 まず、座長の小島敏郎専門委員でございます。
 続きまして、菊森淳文専門委員でございます。
 続きまして、佐藤尚巳専門委員でございます。
 続きまして、竹内昌義専門委員でございます。
 続きまして、時松孝次専門委員でございます。
 続きまして、森高英夫専門委員でございます。
 続きまして、森山高至専門委員でございます。
 なお、本日はご欠席でございますが、井上千弘専門委員にも、本プロジェクトチームの委員として検討を行っていただきます。
 皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議題に入ってまいりますが、これからの進行は小島座長にお願いしたいと存じます。
 小島座長、よろしくお願いいたします。

○小島座長 小島でございます。
 まず、資料を用意しておりますので、資料のご説明から始めたいと思います。
 (経過説明スライド 2ページ参照)
 これは、8月の終わりに小池知事が、豊洲市場への11月7日の移転を延期すると発表した際のスライドです。市場問題プロジェクトチームの役割ということで、土壌汚染の安全性、豊洲市場の施設、事業検討、この3点が主な課題で、それに支援措置が入っていますが、新たな移転時期は、このプロジェクトチームの調査の結果、速やかに判断するというスライドです。
 このうち、支援措置や連携に伴う事項は、ラインとしての都庁の業務で進めておられますので、まずは都庁でご検討いただき、適宜、助言していくことにしたいと思います。したがって、このプロジェクトチームの主な課題は、(1)、(2)、(3)の3点です。
 そこで、検討に先立ち、豊洲への移転については長い経緯がありますので、その経過を簡単にたどってみたいと思います。
(経過説明スライド 3ページ参照)
 豊洲市場の経緯年表です。最初は、築地市場の再整備ということで始まりましたが、1999年11月に築地市場の再整備推進協議会において、現在地での再整備は困難ということで移転整備へと方向転換しました。
(経過説明スライド 4ページ参照)
 そこで、豊洲への移転が候補として挙がるわけですが、豊洲移転は、当初、ここは東京ガスの土地で、2000年段階では、東京ガスは豊洲に市場が移転してくることに対して否定的でした。独自の計画を持っているということで、東京都に対しては、築地の市場がここに移転してくるのはどうかと思うという質問を東京都に出しております。
 その後、東京都は、東京ガスと交渉を続けてまいりました。2001年1月には、東京ガス自身が豊洲の土壌汚染の対応を公表しておりますし、ここに土壌汚染があるという認識をしていましたし、東京都もその認識の上でここに市場を移転するということで、東京ガスと交渉してきました。
 翌2001年7月に、「築地市場の豊洲移転に関する東京都と東京ガスとの基本合意」が成立し、その後、「豊洲地区開発整備に係る合意」、2005年5月の「豊洲地区用地の土壌処理に関する確認書」という文書の交換を通じて、東京ガスからの土地購入の交渉を進めてきた経過があります。
 東京ガス自身も自ら土壌汚染対策を行うということで、2007年3月には、東京ガスとしての土壌汚染対策を完了しております。
(経過説明スライド 5ページ参照)
 その後、東京ガスが土壌汚染対策を終了した後に、東京都では専門家会議を発足させています。専門家会議では、東京ガスが土壌汚染対策を終わったということですが、それでいいのかということでもう一度調査をしようとなりました。調査してみると、ベンゼンが環境基準の1,000倍あったため、もっと詳しく調査してみようということでさらに調査を進めたところ、ベンゼンが環境基準の4万3,000倍、シアン化合物も環境基準の860倍ある土壌が発見され、東京ガスが実施した土壌汚染対策では極めて不十分ということで、対策の提言をするというプロセスに入っていくわけです。
 専門家会議は、2008年7月26日第9回会合で報告書を提出してその役割を終え、2008年8月、引き続いて専門家会合の報告を具体的に実行するための技術会議が開催される運びになりました。これが右端の欄です。この技術会議は何回か精力的に会合を重ねて、2009年2月の12回目の会合で第1回目の報告書を出します。その段階で、東京都としては、今は有名になってしまいましたが、いわゆる疑問解消BOOKというPR資料を作成しました。この段階の総工費は4,316億円といわれています。
 真ん中の欄ですが、アセスメントが必要ですので、2009年5月にアセスメントのための調査計画書を作成しています。ここまでは事前の準備段階です。そして、2010年2月に、豊洲市場整備手法、これはPFI(Private Finance Initiative:民間資金等を活用した社会資本整備)の手法で実施しようという提案をなされていましたが、PFIではなく、東京都が直営で行う形の意思決定が行われております。この段階で、豊洲市場は本当に採算がとれるのかどうか、採算がとれればPFIで対応できますが、採算がとれないとなれば、将来は税金の投入ということがこの時点で概ね予測されるということもあったのかもしれません。
 この動きが加速していくのは2010年10月、石原都知事が記者会見で豊洲移転の決断を表明してからです。この移転表明を受けて、三つの手続きがほぼ同時に並行して進められます。一つは環境アセスメントの案が市場部局から環境部局に提出され、これが11月です。同じく11月に、建物の基本設計の業務プロポーザル案件が公表されており、基本設計を行う会社の募集を始めています。そして、12月には、土壌汚染対策工事設計の契約ということで、土壌汚染対策も始まります。
 ということで、石原都知事の豊洲移転の表明の後、直ちに環境アセスメントと建物の設計、土壌の汚染工事、この三つがほぼ同時に進む状況になっております。このような同時並行となると、この三つの事業の間で連携がとれているのかという問題も出てきます。
(経過説明スライド 6ページ参照)
 この三つのプロセスが進む中で、2011年の4月には、全ての用地の取得を完了しました。東京ガスの土地のほかに東京都の土地、国の土地もありましたので、都の土地は所管替え、国からの土地は購入する、このような手続きも経て、2011年4月には、用地買収を完了しました。アセスメントは、2011年8月に終了し、環境影響評価書の公表・縦覧が終わっています。
 土壌汚染対策については、2011年3月には設計図ができていましたので、具体的な工事はアセスメントが終わった後、2011年8月、土壌汚染対策の工事契約が締結されました。5街区が鹿島ほか、6街区が清水建設ほか、7街区が大成建設ほか、このような分担で土壌汚染対策が進められました。
 建物については右端の欄ですが、先ほどのプロポーザルの中で日建設計がこれを担当することになり、2011年3月に豊洲市場の基本設計契約を締結して6月に基本設計を終わっています。その後、工事の実施計画も日建設計が担当するということで、その契約を締結しております。この実施設計が完了するのが2013年2月です。この実施設計が終了した後、2013年11月に建物の入札が行われますが、建物予定価格628億円は不調に終わり、2回目の入札へと続いていきます。
 2013年3月の段階では、総工費は4,521億円となっていました。その前の2011年の段階では3,926億円ですから、この段階でも経費がかなり増えています。
(経過説明スライド 7ページ参照)
 土壌汚染対策については、7街区が6月6日、6街区が6月13日、5街区が7月4日ということで工事完了報告書が提出され、この工事が終了したことについては、技術会議の最終回である2014年11月に確認しております。
 建物の入札については、2回目の入札で、予定価格1,035億円で、5街区が鹿島ほか、6街区が清水建設ほか、7街区が大成建設ほかという形で落札しております。
 さて、こういう経緯で建物の金額がかなり増えてきたということで、2015年3月の時点で総工費が5,884億円に膨らみました。そして、2016年、これでキャップがかかったのだと思いますが、5,884億円の内訳が若干変わる形になっております。
 豊洲移転について、知事選挙があり、8月31日、小池知事が11月7日の移転の延期を決定し、9月10日、いわゆる盛り土問題で緊急記者会見を行うという展開になっております。
(経過説明スライド 8ページ参照)
 この表は、総事業費の推移です。2009年2月、2011年2月、2013年3月、2015年3月、そして現在についてです。建設費が、2011年以降どんどん高くなっています。東日本大震災があって、その後の人件費や材料費が上がっていくというプロセスはある程度理解できますが、平成11年から13年の間に、990億円から1,532億円に高騰し、2015年に至るまでにまた約1,200億円上がるという急膨張をしていることについて、検証が必要であると考えております。
 土壌汚染対策費は、本来は東京ガスで終わっているはずですが、先ほど申し上げましたように、専門家会議が調査を行ったところ、高濃度の有害物質が検出されたということで、東京都の費用で土壌汚染対策を実施してきて、最終的には、858億円を費やすことになっております。
 ひるがえって、用地取得費については、土地の値段自体は最終的に1,858億円になっております。費用はいろいろかかっており、菊森専門委員の作業になるかと思いますが、その減価償却はどうするのか、あるいは、かなり大きな建物ですから、先ほどのPFIでは対応できないという段階で、今後の経営見通しはどのようになっていくのか、あるいは、ランニングコストを業者が負担できるのかなどという問題がこういうグラフから出てきます。
(経過説明スライド 9ページ参照)
 建物地下空間の問題について話しておきたいと思います。建物地下空間の問題については、小池知事が緊急記者会見してから大きな議論になっていますが、これへの対応は二つあります。一つは、豊洲の土壌汚染に係る安全性の問題です。これは、平田先生の専門家会議の仕事と整理しております。本来は、専門家会議があり、そして、その専門家会議の提言を具体的に実行する技術者会議がありということで、そのまま工事が終わっていればそれで終わるわけですが、専門家会議が出した結論とは違う工事がなされていたわけですので、行政の仕事としては、もう一度戻していかないと行政のループが閉じないことになりますので、専門家会議の仕事として小池知事が依頼しています。そのようなことで、まずは専門家会議の推移を見守ることになります。
 二つ目は、都庁のガバナンスの問題です。調査報告書は、明日9月30日に提出される予定ですが、これは公務員のあり方としての問題です。行政組織ですから、行政が組織として決めたことを担当者が勝手に変えることは決して許されることではありません。自分が正しいと思ったなどのことで行政の規律を乱していく、あるいは、勝手に政策を変更していくことは組織としては許されないことです。
 ということで、いろいろな課題がありますが、建物の地下空間の図面を書いた人は、なぜ土壌汚染の専門家の評価を求めなかったのか。これは専門家の落とし穴とよく言われることです。それぞれの専門家の意見を調整しながら、組織としての意思決定を行うのが行政だと思います。また、なぜその人は上司に連絡しなかったのか。あるいは、上司は知る機会があったのに、なぜ気がつかなかったのか。これもガバナンスの問題です。そして、上司がそれに気づいた後、盛り土がなされていないにもかかわらず、なされているという対外的説明をし続けたのか。これも大きな問題です。さらに、これを防止するにはどのような措置を講ずればいいか。こういう都庁のガバナンスの問題は、都庁のラインのほうで調査し、明日、報告されることになっています。
 この問題は、当面、この市場PTの仕事ではないと整理しております。
(経過説明スライド 10ページ参照)
 資料6をご覧ください。この市場PTが行う作業についてです。まず、「土壌汚染の安全性」の問題です。実は、2年間の地下水モニタリングの結果の確認評価以外にもあるわけですが、現在、専門家会議が再開しますので、専門家会議の様子を見ながら、井上専門委員ともお話しして作業を進めたいと思います。
(経過説明スライド 11ページ参照)
 本日のメインテーマです。検討事項(案)の二つ目のテーマ、「豊洲市場の施設」です。「(1)施設の安全性」ということで、豊洲市場は東京都が管理する行政財産ですから、安全な施設を提供しなければいけないことが基本です。例えば、国道がきちんと整備されておらず、事故が起こった場合は国に損害賠償の請求がある、あるいは、学校の遊具で事故が起きると、それは安全管理がされていなかったから損害賠償されるなど、行政財産の場合、安全なものを提供する義務がありますので、これが最優先課題となります。
 それには2点あり、建物構造計算の問題、建物の設備の問題があります。構造計算の問題は次回の課題ですので後ほど詳しく説明します。施設の機能、これは物流施設としての市場ですので、そこへの交通アクセス、市場内の動線問題、市場内の荷捌きや積み下ろしなどの各機能が働くものを提供する。さらに、温度管理(コールドチェーン)が売り物ですので、その機能が発揮できるような建て付けになっているかということが、建物の課題となります。
 また、「働きやすい施設」という観点では、業者の方々からもいろいろ言われていますが、店舗のスペース、海水の利用、氷をどこから手に入れられるのか、電力・コンセントの配置など様々な事柄があります。
 次に、豊洲市場の建設費が適正かということは、本当にそれだけかかっているのか、どういう材料を使ったのか、人件費はどうだったのかなどの観点からの調査があります。
 その他として、現在は築地市場が使われていますが、雨漏りがする、凹凸があるなどいろいろな話がありますが、築地市場も東京都が施設として管理し、提供しているわけですから、そういう問題があれば応急措置も必要ではないかということが一つの課題です。
(経過説明スライド 12ページ参照)
 検討事項(案)の三つ目のテーマ、「豊洲市場の事業」についてです。豊洲に移転した場合、そのランニングコストがかかるわけですが、この間、豊洲市場が稼働していなくても1日当たり700万円かかるという議論があります。これは精査して圧縮されると思います。しかし、実際に稼働すると、1日当たりもっとかかるのではないだろうか。ランニングコストは基本的に利用者の負担となると、豊洲に移転する業者がその負担をきちんと払えるのか。水道料金、大規模な温度管理をしているので電気代、そういうものを払っていただかなければいけません。それは、移転する前に業者の方々にお示ししておく必要があると思いますし、それを事業者が負担できない場合、税金から、あるいは東京都が支援することがあり得るのか、その場合はどういう理屈に基づくのか。そのようなことがあります。これは豊洲市場がきちんと機能するために必要な経費の計算の話です。
 さらに、豊洲市場そのものがPFIでは運用できないことになったわけですから、現在はどのような将来構想を描いているのか、どのような経営になっていくのか。使えば使うほど赤字が生まれる施設となると、そのお金が何年もつのかということも見ていかなければなりません。多くのお金を費やして整備したものですから、減価償却はどうするのか。等々、この市場ができることによって東京都が活性化していくか、ここを中心に豊洲市場が東京の食を担い、さらに発展するという絵がどうしたら描けるのか、あるいは、描けているのか。そういう問題があります。
 最後に、「築地場外市場への支援措置」についてです。場外市場の方々からもご要望をいただいておりますので、その支援措置も大きな課題です。
(経過説明スライド 13ページ参照)
 次回ご検討いただきたいテーマについて述べます。構造計算の問題として3点あります。1点目はコンクリートの厚さです。日建設計が提出した構造計算が、机上に6分冊置いてあります。これは水産仲卸棟だけの構造計算書で、大変膨大な量です。この構造計算書を読んだ人がいまして、水産仲卸棟の4階の下はコンクリートの厚さが10mmであると書かれています。実際は150mmですが、ここは「10」と記載されており、構造計算は10mmとして計算が進んでいます。
(経過説明スライド 14ページ参照)
 しかし、実際の設計図では、押さえコンクリートの材厚は150mmという計算ができます。これは、厚さ175mmから断熱材の厚さの25mmを引いて初めて、このコンクリートは150mmであることがわかります。
(経過説明スライド 15ページ参照)
 なぜこれがわかるかというと、これが実際の施工状況で、仲卸棟の4階の小さなスペースですが、床面が700mm、躯体部が525mmという、実に細かな数字が記載されており、ここを差し引きすると、ここは厚みが175mmだという計算ができます。
(経過説明スライド 16ページ参照)
 この175mmの内訳でもう一つの図を見ると、段熱材の厚みが25mmという図があります。
 こういういろいろなところにある図を見て、計算していくと、実際には150mmのコンクリートが打たれており、これは構造計算書の10mmとそごがあると。こういう事柄が、いわゆる「10ミリ・150ミリ問題」です。
(経過説明スライド 17ページ参照)
 2点目の問題は、耐荷重(積載荷重)が700kg・1トン/1㎡であることです。これは、業者の方々からのご要望あるいはご意見を聞きますと、この上に水槽を載せたり冷蔵庫を載せたりするのがとても重い、1トン以上はある、2トン、3トンにもなる。そうすると床が抜けるのではないかというご心配があります。
 これは技術者協会のホームページから持ってきたものですが、耐荷重の問題は三つの意味があるということで、1㎡当たり700kg・1トンというのは、左の「床設計用の積載荷重」のことを示しています。しかし、地震が起きたらどうするのかという問題が右の「地震力算出用の毛記載荷重」の問題でありまして、構造計算と地震の耐荷重がどうなるのかということが二つ目の構造計算上の問題です。
(経過説明スライド 18ページ参照)
 三つ目の問題です。これは、東京都のホームページでは見られない図です。仲卸棟は、建築確認書上は4階建てになっています。しかし、地下に空間があるということで、構造計算上は4階建て地下1階で計算しなくてもいいのかという点です。
 構造計算については、この3点が主に問題になります。
 ちなみに、10mm、150mmというのは、最初の構造計算と設計図の提出が行われて、東京都でも精査しました。構造計算は別のところでチェックしていますが、そこの検査でも見抜くことができなかったという経過があります。そういう意味では、東京都のチェックも万全ではないと言えるわけで、この三つの問題を、検査・調査をしなければいけないだろうと考えております。
 この課題については以上ですが、次回は、この問題を議論するには、その当事者である日建設計の方にご説明いただかなければいけないのではないかとも思っています。それも含めてご議論をお願いしたいと考えます。
 説明が長くなってしまいましたが、まずは全般についてお話をいただいて、残りの15分から20分くらいで、構造計算についての次回のお話をしていただきたいと思います。
 構造計算以外の全般的な点について、ご質問、ご意見があればいただきたいと思います。

○竹内専門委員 それぞれのご専門の先生がいらっしゃっているので、ご意見がおありになれば、どの順番でも構わないと思いますので、ご専門と絡めながら全体のお話をしていただければいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○小島座長 ありがとうございます。
 では、菊森専門委員からお願いします。

○菊森専門委員 菊森です。
 今のお話を伺っていて、全体の流れはよくわかりました。私の担当といいますか、特に検討事項(案)の「3.豊洲市場の事業」について、小島座長からご指摘いただきましたように、まず「業者の負担と事業継続性」の点は、基本的に、業者が今後も事業を継続していくことができるだけの経営体力を持ち得るのかどうかという問題、その負担が妥当なのかどうかという問題が一つの大きな論点としてあろうかと思います。
 「豊洲市場の事業継続性」のところで、今回のこの問題を見るときに、私はこういう流れで考えてきているのですが、一つは安全・安心な市場づくりが本当に担保されているのかどうかということです。地震が起きた場合の対応も含めて、ここは最初に建築の先生方と押さえておくべきことだろうと思います。ここが崩れると、そもそも市場価値自体も大きく揺らぐことになりかねないと思います。
 2点目に、コスト、投資額の問題で、ここは私の仕事のメインになろうかと思います。投資コスト、特に回収期間の問題、なぜPFIの手法をとらなかったのかということも含めて、投資額について、建築の先生方と一緒にコスト計算も含めて検討しておくべきではないかと思います。仮に過大な投資をしているとすれば、初期投資額だけではなく、毎期の運営コストも当然かかってきますので、妥当な投資額とコストはどのくらいのものなのか、特に業者が負担することを前提にするならば、あるいは、市場が今後縮小していく部分があって、水産品の取扱高も減っていくと思います。青果品はそれほど減らないと思いますが、関東圏の人口が減っていく中で、どのようにしてコストを吸収していくのかという問題があろうかと思います。
 3点目の私の論点として、市場オペレーションが本当に効率的にできるような市場が形成されていくと期待してよろしいのかどうかということです。先ほどお話がありましたように、作業スペースの問題、物流の問題、コールドチェーンの問題など、ここのところは建築の先生方とも意見交換させていただきたい部分です。これが先進性がないと、世界に自慢できる豊洲新市場は実現しないだろうと思います。私は、平成15年5月の市場構想を拝見して非常に感銘を受けましたが、これが本当にどこまで実現できるものかということを、この検証作業の中で期待を持って見届けていきたいと思っています。
 4点目に、「成長への企画」というところで、東京オリンピック・パラリンピックを控えて、今後、東京が非常に注目されます。特に、日本の食の最大の台所である築地市場及び豊洲市場に対する期待は極めて大きなものがあるということで、食のグローバル化ということがこれからはどうしても必要になってまいります。そのグローバル化の中には、輸出面と海外業者の市場参画の両方があろうかと思いますので、そうした観点から考えていくべきではないかと思います。
 最後になりますが、先進性と絡めて、成長に資するような形で、例えばIT(Information technology:情報技術)化、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)化の問題や環境配慮の問題などの点について、今後の成長への企画が新しいビジネスにつながっていく場外取引や外国人観光客の誘致の問題など、東京でなければなかなかできないような、発展性のある議論をもう一度ここで改めて見直して、それにふさわしい豊洲市場であるためにはどうしたらいいのかということを考えておく必要があるのではないかと、私は考えております。
 以上の5点について、私が主に担当させていただきたいと思います。

○小島座長 ありがとうございました。
 では、佐藤専門委員、お願いします。

○佐藤専門委員 佐藤です。
 私は主に建築の設計に携わっており、これほど大きくはないのですが、大規模建築を幾つか手がけた経験から幾つかご意見を申し上げたいと思います。
 先ほど、地下空間の問題はこのプロジェクトチームでは扱わないということをおっしゃいましたが、構造の問題の地下空間の点にもかかわりますし、非常に大きな誤解を招いている部分がありますので、それについて少し申し上げたいと思います。
 「地下空間」と呼んでいる部分は、建築で言うと、一般的には「地下ピット」というものを設けて、それは、構造上、1階の床を支えるための基礎梁があって、その基礎梁の下にコンクリートのスラブをつくることによって地下ピットが構成されます。そのピットには、排水管やガス管、電気管、たまにダクトが通ったりしますか、主にそういう設備に使われる空間になります。それが今回はかなり深いところまで空間として利用しているということで「地下空間」という呼ばれ方をしました。
 ここには二つの問題があって、一つは、誤解されている最も大きな問題は、地下に大きな空間をつくったことによって、大変な出費をしているのではないかという誤解があるのではないかと思います。もう一つは、この地下空間は一体何のためにあるのかという、構造について上手に説明しきれていない問題があると思います。
 最初の問題から申し上げたいのですが、三つの街区の総面積が40.7ha(40万7,000㎡)あります。この空間に規定どおり4mの盛り土をすると、約163万㎥という数値になります。先ほどご紹介があったように、18回の技術委員会で最終報告されている、実際に盛り土に使った土量は63万㎥でした。差し引き約100万㎥の土が実際は盛り土されなかったわけです。100万㎥のインパクトをどう捉えるかということですが、土を動かすことについて、土量を1㎥動かすことの単価は非常に幅が広くて、5,000円だったり、1万5,000円だったりしますが、話を見えるようにするためにざっくりと1万円と評価すると、盛らなかった土の評価は100億円に相当します。
 さらに、一旦盛り土したとして、そこから建築に必要な地下ピットをつくったとします。地下ピットも、通常の大きな建物だと2mくらいの深さになりますが、今回の市場は350m×200mとか非常に巨大な空間で、その地下に通す配管の水勾配を考えると、建物半分から最短距離でも100mくらいの経路を経ないと水が流れません。そうすると、100分の1で計算しても1mの落差ができます。そういうことを考えると、2mではとても足りない。実際に設計すると、恐らく3m、あるいは、それ以上になるのが適切な地下空間のピットの寸法です。実際、100万㎥盛ったところから3mの地下空間を掘ることを考えると、75万㎥くらいの土をそこから出すことになります。土を出すことに対しては、捨て代などで高い金額を取られたりするケースがありますし、これも議論を簡単にするために1㎥当たり1万円とすると75億円かかりますから、盛って掘ることによって175億円くらいの費用が余計にかかります。実際にはそれをしなかった。下から組み上げたことによって、構造的に増えた分量は1mからせいぜい1.5mくらいの構造の費用です。それを差し引いたら一体どちらが得なのかということを、当時の技術担当の方は当然考えていたと思います。技術担当のトップの方にも当然それは報告されていたし、わかっていたし、技術者であれば、そのくらいのそろばん勘定はすぐに行います。
 皆さんが自分の住宅を建てる場合、1mの土盛りをして、そこから75cm削って工事を行うという提案があった場合、ばかじゃないか、なぜそんな無駄なことをするんだと言うに決まっていますよね。実際にそれをしなかったのは、都庁の技術担当の方の正しい判断だったと思います。それが報告されていない、シェアされていないことは非常に大きな問題ですけれども、技術的な判断としては、盛らないで下から建物を建てたことは正しかったと思います。
 というのは、今回のケースは、上から掘っていくのではなくて、既に掘れているところから建て始める建築だったわけで、そこが大きな違いです。ですから、この地下空間は決して高いコストがかかった空間ではありません。それが一つです。
 もう一つ、なぜこの空間が必要だったかという点ですが、先ほど説明したように、地下には非常に多くの配管類、ダクト類が走っています。皆さんも写真を撮られて十分認識されていると思います。設備というものは、20年から25年くらいで更新する時期が来ます。必ず更新したり、悪いものを取り替えることが必要になります。これをもし地下ピットとして設けていた場合、建物の下には250から300くらいの小部屋がずらりと並んでいて、そこに60cmの直径の人通口を設置することになります。先日、現地を見た際に皆さんは通ったと思いますが、そこを通りながら、真っ暗な空間を進みながら、地下に配管された設備類を保守点検することが現実的なことかどうか。実際には、それは不可能に近いくらい大変なことですね。酸欠になるかもしれない、真っ暗な空間だし、通り抜けられないから、行かなければいけない場所にもなかなか行けない。それを考えると、あと1m余分にして、土盛りをせずに下から大きな空間をつくり、必要な基礎梁は床から2mくらいですから、その下は2m実際にあいているわけです。
 皆さんもご覧になったように、この空間は何なのかという広い空間があるけれども、実際は、その空間は設備にとっては非常に重要な空間です。簡単に問題がある場所が見つけられますし、問題があった場合は簡単にそこにアクセスして、それを取り替えたりすることができます。あるいは、20年後でなくても、40年後、こうした配管を必ず取り替える時期が来るわけです。そういう場合、地下ピットではどうにもなりません。しかし、この地下空間があることによって、この建物の保守・点検性は格段に上がります。それによって、豊洲市場の長寿命化というか、50年先、70年先でも十分に、更新しながら使用していくことができる、そういう非常に重要な空間ができたわけです。これを設けたことも、私は、都の技術系の方の英知だと思いますし、これは決して責められることではないと思います。私は、単純に技術の話をしています。
 ということで、地下空間に対する大きな誤解があるので、これについては、皆さんにしっかりと認識を新たにしていただいて、有効な空間であると。ただ、本当は、それに実際はいくらかかったのかという話は、もう少しきちんとした計算をしなければわかりませんが、175億円というレベルの話ではないだろうと思います。
 その上で、この空間が構造的に一体どのような評価をされていたかと私なりに解釈すると、通常の地下ピットというか、基礎梁の下の空間ですから、まず書いていないのは明らかです。ただし、4mの大きな空間ですから、構造上の適切な計算をしなければいけないことは絶対条件です。建物の地下に入ってよく観察してみたのですが、基礎梁があって、杭があって、基礎梁と杭と柱を連結する部分を「フーチン」といいますが、非常に大きなコンクリートの塊です。その塊が、地下4.5mのところまでずっと下りた形の、あまり例のない、言ってみれば高下駄を履いているような構造かもしれません。そのような構造ですが、それを前提として構造計算をしている限り、それは安全性が確保された建物として私は認識するし、確認審査なり構造評定なりでそういうものが第三者の目できちんと検査されているはずです。先ほどのお話のように、そこで見落としのようなことはあったかもしれませんが、そこについては構造の専門家の方にしっかりと見ていただければ、安全性については十分評価できると思います。そういう特殊な構造ではあるけれども、私は、安全は担保されていると思います。
 もう一つ申し上げたいことは、この地下の空間があったことによって、地下水がしみだしてきたときにすぐに発見できて、また、地下水を採取して調査することができました。もしこれが地下ピットだったら、そもそも入っていけません。地下ピットに水がたまっていること自体に、恐らく誰も気づかない。そういう状況で20年30年と放っておかれて、本当によかったのですかということです。
 ですから、水が入ってきたことによって、それが発見できたこと、それを適切にモニタリングすれば安全性が確認できるという意味においても、この地下空間は有用な空間だったと思います。
 地下水が上がってきた最大の原因は、本当はAP1.8という、砂利の下よりも20cm下のレベルでコントロールするはずの地下水管理システムがまだ作動していない状況ですから、雨が降って地下の水量が上がってくると建物の中に水が入ってくるのは当然の結果です。ですから、今後は、水を早く抜いて適正なAP1.8というレベルに地下水位を管理することと、万一地下水が別のルートで入ってきたとしても、例えばそこに監視カメラを設置して、その映像を24時間、市場の誰の目にもとまるようなところにモニターを置いておけばいいわけです。そういうことをすることによって監視もできるし、それに対して衆目で監視することもできるので、そういった意味では安全性の確保は今後十分可能だろうと思うので、私は、この地下空間については正しい選択だったし、東京都の技術系の役人の方の名誉にかけて、これは正しい選択であったと思います。

○小島座長 なかなか微妙な問題で、ガバナンスの問題からすると規律の問題なので、そこら辺は処分の話になりますから、これ以上は本プロジェクトチームの検討事項ではありませんので。
 時松専門委員、お願いします。

○時松専門委員 東京工業大学の時松です。私は、建築基礎構造、地盤・地震工学、地震防災、そういう分野を専門としていますので、そういう観点からこのプロジェクトチームに貢献できればと考えています。
 先ほどから話題になっている盛り土の件ですが、こういう軟弱地盤に新たに盛り土をすると、その後、圧密沈下という問題が生じますので、こういう地盤に建物を建てるという観点に立つと、盛り土は避けたほうがいいのではないかというのは、技術者であれば一つの選択肢として考えるのではないかと、今回の件に関しては感じております。土壌汚染の問題があって盛り土するようにということだったので、その辺に関しては今後精査していく必要があると思います。
 ただ、地下空間と言っていますが、実際には、もともとの地盤面よりも上に建物を建てているわけで、ある意味、高床式で、基礎が地表面に突出しているとも考えられるわけで、若干特殊かもしれない構造の安全性や耐震性については、もちろん設計で十分に検討されていると思いますが、もう一度別の観点から確認していただくのがいいのではないかと思います。
 それから、この土地は若い埋立地であって、2011年の東日本大震災の際にも液状化したという報告がなされています。この建設工事に伴って、埋立て層、その下の砂層の液状化対策や新たに盛り土して入れ替えた土の地盤改良等は慎重に行われていると思いますが、万一巨大地震が起きた後のこの市場の事業継続性を考えると、その辺の耐震性能も、この際、同時に確認しておく必要があるのではないかと思います。
 以上です。

○小島座長 ありがとうございました。
 森高専門委員、お願いします。

○森高専門委員 森高でございます。私は、このプロジェクトチームには、日本建築構造技術者協会の代表として参りました。先ほどから話題になっている施設建物の構造安全性、とりわけ耐震安全性について第三者的な所見を述べてほしいということで東京都の方から依頼を受けてお引き受けしました。
 先ほど小島座長から、構造計算というのは構造設計の中の一部の業務ですが、その資料の中にそごが見つかったというお話をされていまして、それが一つです。正確に申し上げますと、コンクリートの厚みというお話をされていましたが、今、話題になっている仲卸棟の4階の荷捌きの床の仕様ですね。実際の躯体のスラブは150mmの厚みがあって、荷捌きは、恐らく防水をしなければだめだということでアスファルト防水されて、その上に押さえコンクリートが必要になります。通常は、そこは150mmにするところが、計算の際の荷重の設定でこれが10mmになっている点がそごであったということで、これについては、設計者にヒアリングしながら妥当性を検証していきたいと考えています。
 この件については問題が2点あります。一つは、押さえコンクリートの厚みを見ると、150mmでは重量が約300kg違う。ただ、それを支えている構造体のスラブがもつか、もたないか、安全かどうかというチェックが一つあります。それから、荷捌きは4階の仲卸市場の全体ではなくて一部だと思います。一部としても、耐震設計上想定している設計地震力が若干アップします。それがどのくらいかという検討が必要になります。
 あわせて、耐震安全性の話で、正式に資料はまだ見ていませんが、市場の特性から、通常、建築基準法で定められている耐震性能の25%割増を目標に設計されていますので、恐らくかなり余裕を持って設計されていると思うので、それを実際にヒアリングの中で確認したいと思っています。
 もう一つは、市場として、水槽を置いたり、ターレが走ったり、積載荷重が妥当かどうかという話ですが、この設定についてもヒアリングの中で考えていきたいと思っています。例えば、今、説明がありましたが、平米当たり700kgが適正かどうかについては、床荷重平米当たり700kgというのは、70cmの深さの水が床にずうっとあるという前提で床の設計をされているということですので、実際に市場で使われているのは、水槽は部分的にあるだけ、ターレもその都度走っているだけですので、実際の使われ方に即した値かどうかが、妥当かどうかという判定になります。ちなみに、自動車通路は平米当たり550kgくらいを想定して設計しているので、それよりは大きい値であることを想像していただければいいかと思います。
 もう一つ懸念されていることは、建築確認上は4階建てですが、ピットがあるので、実際には地下として構造設計上配慮しなければいけないのではないかという点は、設計者の設計思想があるので、それを確認していきたいと思っています。
 いずれにしても、構造設計のフレームの計画、これは設計者、意匠設計者やいろいろな方と、柱のスパンなどを決めて、実際に設計されて、それが妥当かどうかを構造計算で確認されるという作業をされているので、構造計算書や図面は、恐らく、東京都の建築指導課で厳密なチェックをされているし、例の姉歯事件以降、構造適合性判定を第三者でチェックしていてダブルチェックされているので、ある意味では、それを経た資料であるという前提で我々は確認したいと思っています。
 時松専門委員がおっしゃっていましたが、もともと地盤が悪いところに建っているので、近年懸念されている首都直下地震が起きたらどうなるかということも、設計者の考え方を聞きながら、我々として、妥当かどうかという判断をしていきたいと思っています。皆さんが最も心配されているのは、東京に首都直下地震が起きたらこの市場はどうなるのかという話もありますので、そういうこともいろいろ考えながら、今回の課題に取り組んでいきたいと思っております。

○小島座長 ありがとうございました。
 では、森山専門委員、お願いします。

○森山専門委員 森山です。
 私の場合、今回の問題について、建物の安全性と使い勝手、施設の持続性というテーマをお聞きしました。その上で言いますと、要は、この建物は、普通の建物では建主である施主、つくる側の設計や建築の側が、コミュニケーションに非常に欠けていた部分があったのではないかと考えています。それは、東京都が準備して、そこに市場の方々に入っていただくということですので、都の担当者の方は、使う方の代わりに建築のプロの方とお話をしていたと思います。その中で、どのような議事録が残されているかにもよりますが、お互いが話している言葉や内容が十分に伝わっていなかったのではないかということを心配しています。結果として、出来上がったものの、これでは困るという意見が出たり、構造の安全性云々の話もそうですが、建築する側で、ある種の意図があったとしても、それが十分に都民の皆さんにも十分伝わっていないことで、いろいろなご心配をおかけしているのではないかと思っています。
 そういう意味では、この建物を整備する過程でかかわった都の担当者の方、設計の担当者の方、途中、工事中にいろいろな出来事も起きていると思いますから、そうした方々も含めた打ち合わせ議事録等の提出もしていただいた上で、どこがコミュニケーション不足に陥っていたのかということを明らかにすることで、豊洲問題ということで不安を抱えている市場の方々もそうですが、公共事業を取り巻く状況は、都民の方だけではなくて日本中の方がこの件に注目していると思いますので、そのあたりを、もっとより多くの方にわかるようにお伝えしていきたいと考えております。

○小島座長 ありがとうございました。
 では、竹内専門委員、お願いします。

○竹内専門委員 私は、建築の設計事務所で活動しながら、大学で建築とエネルギーについて教えることを専門にしています。その観点からここにお呼びいただいていると思いますが、最も気になるのは建築の経済性です。ランニングコストがどのくらいかかって、それを誰が負担していくのか、そこに尽きるのではないかと思っています。
 1日に700万円かかるということは、年間25.5億円の光熱費がかかる。何も稼働していなくても25億円かかるということですので、これが動きだしたらどうなるのだろう、誰が負担するのだろう、どのように維持・保守点検を行うのかと思っています。
 設計の使い勝手の問題も、普通は平面で行うところを4階建てにした結果として、そこに伴う動線や、階が上がることで不合理な部分が増えていくことによって、ますますランニングコストに対しても大きな負担がかかっているのではないか、また、そこに設計の無理があるのではないかという印象を持っています。
 私からは以上です。

○小島座長 ありがとうございました。
 豊洲の経過を見ると、結局、土壌汚染がある場所に整備するというところから始まっているので、土壌汚染対策をどうするかという議論をするわけですね。お話を聞いていると、土壌汚染対策は実施しなければならず、その対策が盛り土であると。それを与件にして建物を建築するということで、建物に無理があるというと変ですが、そのように聞こえるような気がします。最初からちょっと無理なんじゃないの、というように聞こえます。
 それと、佐藤専門委員のお話では、建築家がそうおっしゃるとすると、役所の中では、それは当然議論してもらわなければいけないことだと思います。これは正しいからと、上司の意見も聞かないで勝手に進めるということになると、やはり規律違反ですね。これは名誉かもしれないけれども、処分されることを覚悟して行う人はいないので。私も公務員でしたが、はっきり言うと、それはガバナンスの問題として、役所にそういう人がいては困ります。ですから、それはきちんと議論してもらわなければいけない。議論しないでそれを進めてしまうと、それは大きな問題です。もし、そうであるならば議論していただかなければいけない。これも、組織にいる人間としての最低限の義務なので、もしそう思ったら、それは議論していただかないといけない。ということが、事務系の職員としては、それならそう言ってくださいよ、という話になるところがあって、なかなか微妙な問題ではあるなと思いました。
 もともと土壌汚染対策した上に建物を整備するということは、建物を建てる上で対応しにくいということでしょうか。
○佐藤専門委員 やりにくいことはないと思います。先ほど申し上げたように、最初から掘ってあったわけですから。地下空間としては、掘ってあったところから地盤面として構築を始めるわけですから、工期的に見ても、工費的に見ても、そのほうが合理的だし、納得できる選択だったと思います。
 先ほどガバナンスの問題とおっしゃいましたが、私も都の方とお仕事をして理解していますけれども、担当の技術者は当然そう考えていただろうと。それを、技術系のトップの方、財務局で言えば局長さんなりに報告していないわけがないんです。私の経験で言えば。そういうものをできるわけがないので、局長クラスの方は絶対にわかっていたはずです。
 もう一つ申し上げると、先ほどの経過の中で、土壌汚染対策工事の設計図が完了したのが2011年の3月です。これで2011年8月に発注されているということは、発注されていた図面は土盛りをしない形で発注されていました。ということは、2011年3月の設計図は土盛りをしない設計図ができていたわけです。それをもとに、恐らく、技術系の人は連絡し合っていたと思いますから、建築の設計を始めたと思いますが、設計を始めたときは、そこから2m土盛りして、そこからピットをつくるという選択肢も恐らくあったと思います。それを含めて地下空間をつくることを検討課題とするという条件がついたと思います。
 そこで、実際に土盛りをせずに下からつくろうという決断をした。実際に2011年3月には何がありましたか。東日本大震災が起こりましたね。大震災が起きて何が一番困るかというと、土木関係の技術者なり職人なり機材なりが圧倒的にそちらに流れてしまうという懸念があったわけです。恐らく、都の担当者の方は、やはり土盛りをせずに最も合理的に進めるには建築を下からつくったほうがいいだろうという判断の一つの指標にもなったのではないかと思います。
 さらに、一旦取りかかった工事は、土木の場合、途中で数量が変わると、その数量を全部調整して最終的にお金を払いますね。そういうことを考えると、途中で震災関係のことで費用が上がるとかいうことになると、とてつもなく土工事の費用が上がる可能性が十分にあった。そういうことを考えると、できるだけ土はいじらないほうがいいという判断があって当然だったと私は思います。それが、技術系のトップにはきちんと報告されていただろうし、その技術系のトップの方と事務系のトップの方の連絡がうまくいっていなかったか、理解が十分ではなかったか。私はそのレベルの話だと感じます。担当の課長さんや部長さんは、絶対に上司に報告したと思います。

○小島座長 その話は別のところで行いますので。この件については、「はず」ということが全く通用しないので。東京都の調査を待ちたいと思いますし、事実は証拠なり証言なりに基づかないと、これは極めてセンシティブな問題で、先ほど申し上げましたような、いわゆる責任問題を議論することなので、我々が軽々に「はず」ということは、それは空想に過ぎないので。ほかできちんと対応しておられますから。ご意見はそういうことだということですが。
 今後、構造計算の話は基本の点なので、議論していっても、ここがぐらついてしまうと土台が緩んでしまいますから、これを最初に対応して、そうすれば、造作の問題や建物の個別の問題に入れると思いましたので、これを最初に持ってきました。それはそれでよろしいでしょうか。

○森高専門委員 はい。少しお時間をいただきたいと思います。

○小島座長 10月後半にはと思っていますが、よろしいでしょうか。

○森高専門委員 はい、それで結構だと思います。

○小島座長 森高専門委員が専門家ですので。

○森高専門委員 先ほど小島座長から課題が3点示されましたが、それ以外に話題としてあと二つくらいあったと思います。とにかく、最も大事なことは、豊洲市場の建物の構造の設計思想がどうであったかということだと思います。その中で、図面と計算のそごがあったかもしれませんが、それもどれだけ余裕の中でカバーできているか確認すればいいのかなと思っています。それは数字で出てきますので問題ないと思います。ただ、少し時間をいただいて、あとは設計者にヒアリングしながら、課題を一つ一つつぶしていけばいいかなと思います。

○小島座長 もう一つは質問です。設計図書は、仲卸棟のものだけでこれだけの量がありますが、ほかにも建物があるわけで、仲卸棟を調査すれば代表性があるのか、ほかの建物も調査しなければいけないのか、いかがでしょうか。

○森高専門委員 仲卸棟のほかにも青果棟もありますね。それぞれに荷捌きの床の仕様がありまして、全部この条件で整備しているかどうかの確認が必要です。たまたま水産仲卸売り場の4階だけの問題なのか、それも含めて資料を拝見させていただきたいと思います。

○小島座長 わかりました。それでは、ほかの資料も取り寄せます。
 次回の関係でほかにご意見ございますか。

○森山専門委員 今日の会議はこういう形で中継もされて公開されていますが、こうした資料も全て都のホームページ等を通じて公表されていくのでしょうか。逆に、そうでなければ皆さんにオープンになっていかないのではないかと思っていますが。

○小島座長 本日の配布資料は全て公表されます。設計図書の資料はあまりにも多いので、積極的に公開するとなるとCD-ROMを配布するのかという話になってしまうので、それはないですが、情報公開請求をしていただければ、秘密に属するものはほとんどありませんので、情報公開請求をしていただければ、いつでも閲覧できます。そういう扱いです。分量が多くて、CD-ROMを作製してみんなに配るというものではないのですが、興味がある方が見たいという場合、こことここを見るとこれについてどう判断できるかということは可能だと思います。
 そういう意味では、今や専門家も試される時代で、例えば博士論文を出しても、博士論文を出した大学は良かったのかと集まって検証すると、博士を出したのは間違っていたのではないかというようなことも議論になる時代ですので、どういう方々でも、見たいということであれば見ていただいて、これはこうだ、ああだと言っていただくことは可能な状況に置いてあります。
 ほかにございますか。

○竹内専門委員 専門家が試されるということも確かにそうだと思いますので、是非、積極的に公開して、みんなでチェックすればいいと思います。
 あと、使う築地の業者の方に対しての情報公開もあっていいと思います。まだよくわかっていないんだよね、という話を関係者の方からよく伺うので、店子として入居するテナントだと思えば、なぜ説明していないのかと、建築に携わる人間としては少し不思議な感じがしているので、そこは今日の議題とは少しずれますけど、市場関係者の方への情報公開もどこかでご検討いただけたらなと思いました。

○小島座長 ありがとうございます。
 次回は、構造計算は私も見ていて難しいと思いましたが、インターネットでご覧になったり、記者の方もいらっしゃいますが、あまり専門用語ばかりで話すと、専門家は楽ですが、聞いているほうがわからなくなってしまうということがあります。専門用語は外国語が多くて、我々も法律用語でずっと話していると、何を言っているのかわからないと言われます。ふだんは使わない言葉を法律用語で言ったりしますので。できるだけ、わかりやすく説明していただけるとありがたいと思います。よろしくお願いします。

○森高専門委員 わかりました。そのように努力します。

○小島座長 今後の予定ですが、このような形で、必要な場合はヒアリングをする人をお呼びして、あるいは、先ほどの10ミリ・150ミリ問題も、見つけた人がいますので、公平を期するということで、日建設計のこれはおかしいという人もお呼びして、実のある議論をしていきたいと思います。
 これは一つずつ整理していけば、基本的には、菊森専門委員がおっしゃったこともそうですが、これだけのお金をかけているわけで、これが東京の成長に役立つ、これが東京の夢になっていくという自信と安心がこれによって持てるかどうかです。いろいろ問題があれば今のうちに全部出して、全部を解決した上で、そういう希望を持って進められる状態にならないと、これはうそだろうと思います。ですから、専門家だけではなくて、皆さんが理解することも重要だと思っています。

○森高専門委員 一つだけ確認です。「(5)その他(築地市場の現状・応急措置を含む)」というのはどういうことでしょうか。

○小島座長 築地市場も東京都が提供している場所です。私たちも見ていますが、雨漏りがあるなどいろいろな問題があります。たとえ来年引っ越してしまうアパートでも、そこが雨漏りをしているのであれば、家主の責任としてはそれを修理しなければいけません。ですから、築地については、こうだああだといろいろなネガティブキャンペーンもありますが、家主として必要な措置は今でも実施しなければなりません。そういう意味です。
 現在の築地市場の状態で、敷地のどこかにわだちのへこみがあって、そこが原因で事故が起きると、これは施設を提供している都の責任になります。そういう意味では、修理が必要な箇所を放置しておくわけにはいかないだろうということです。

○森高専門委員 少し心配したのは、築地市場の構造はよく知らないのですが、耐震性については東京都で議論されているのでしょうか。

○小島座長 築地から豊洲に移らなければいけないことの理由の一つに耐震性があります。つまり、築地市場が今のままでいいということでもないですが、そういう意味では、施設提供者としての応急措置はその段階です。どこまで対応するかは一つの判断だと思いますが、すぐに事故が起きる、雨漏りがするなどのことは放置できないということです。
 少し時間が超過しましたが、本日はこれで終わりたいと思います。
 次回は10月後半が予定されていますが、その前にもいろいろ打ち合わせをさせていただくことがあるかと思いますので、よろしくお願いします。
 本日はどうもありがとうございました。
 事務局から何かありますか。

○事務局(池上) 座長、ありがとうございました。
 本日の議題は以上となります。限られた時間ではありましたが、今後の検討の方向について共通認識が図られたものと思います。
 最後に、事務局より事務連絡をですが、本日の会議の議事録は、準備ができ次第、都庁のホームページに掲載しますので、あらかじめご了承ください。
 これをもちまして、第1回市場問題プロジェクトチーム会議を閉会いたします。
 どうもありがとうございました。


午後2時34分閉会

▲ページの先頭へ