第10回市場問題プロジェクトチーム議事録

平成29年6月5日(月曜)
都庁第一庁舎7階大会議室

14時01分開会

 1.開会
○事務局 ただいまより第10回市場問題プロジェクトチーム会議を開催いたします。
 本日の会議の議事進行を務めさせていただきます、市場問題プロジェクトチーム事務局の池上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は多くのプレスの方々にいらしていただいておりますが、本日の会議の様子は最初から最後まで公開しますとともに、あわせてインターネット中継を行っております。
 なお、本日の会議はタブレット端末を使用して進行してまいります。会議資料につきましては、お手元の端末台に御用意しております。
 会議中、端末に不具合が生じた場合には、周りにおります職員がサポートいたしますので、お声がけください。
 何か不足等がございましたら、事務局までお声がけください。

 2.あいさつ
○事務局 それでは、議題に入ります前に、プロジェクトチームメンバーを御紹介いたします。
 順に御紹介いたしますので、その場で御起立の上、一礼のほどお願いいたします。
 まず、座長の小島敏郎専門委員でございます。
 続きまして、竹内昌義専門員でございます。

○竹内氏 よろしくお願いします。

○事務局 次に、菊森淳文専門委員でございます。

○菊森氏 よろしくお願いします。

○事務局 次に、梶田晋吾専門委員でございます。

○梶田氏 よろしくお願いします。

○事務局 次に、井上千弘専門委員でございます。

○井上氏 よろしくお願いします。

○事務局 次に、時松孝次専門委員でございます。

○時松氏 よろしくお願いします。

○事務局 次に、佐藤尚巳専門委員でございます。

○佐藤氏 よろしくお願いします。

○事務局 次に、森高英夫専門委員でございます。

○森高氏 よろしくお願いします。

○事務局 なお、森山高至専門委員につきましては、去る平成29年5月29日に、御本人より辞任の申し出があり、翌30日に辞職が認められましたことを御報告いたします。
 皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議題に入ってまいりますが、以降の進行は小島座長にお願いいたします。
 小島座長、よろしくお願いいたします。

 3.議題
 (1)市場問題プロジェクトチーム第1次報告書案について
 (2)その他
○小島座長 皆様の御協力をいただき、第1次報告書の案ができ上がりました。まだ十分ではないかもしれませんが、わかりやすく整理をしているつもりでございます。
 構成でございますが、早速入ってまいります。
 第1次報告書の構成でございますが、三つに分かれておりまして、卸売市場のあり方、豊洲移転案、そして、築地の改修案と三つのパートでございます。
 まず、卸売市場のあり方から入ってまいります。
(6ページ) 
それぞれの単元の冒頭にまとめをつけてございます。
 豊洲か築地かという議論がありますが、この議論をどういう脈絡の中で考えていくかということを、この卸売市場の状況、これで考えてみたいと思っております。
 まず、卸売市場の動向。
 最初でございますが、今まで議論してきたことを言葉であらわすとどういうことになるかということを考えて整理をいたしました。
 卸売市場は斜陽産業の特徴を備えている事業でございます。この現実をまず直視するということから始める。
 斜陽産業というのは政策的にどういう対応を打つか。一つは税金や補助金を投入して延命させる。しかし、早晩、マーケットからは退出をしていく。これが一つです。
 もう一つは、新規事業を取り込むことなどによって、ビジネスモデルを変化させて再生する。日本の繊維産業の例であります。
 もちろん卸売市場は後者であることが望ましいということであります。
 いろんなデータから、東京都の中央卸売市場は、全国の卸売市場に比べて大きな需要のある後背地を持っておりますし、規模の利益を享受しております。ほかと比べると、経営的には好条件にあります。
 次の単元でございます。
(17ページ)
 卸売市場全体が斜陽産業の特徴を持っているということで、国も手をこまねいているわけではないということで、農水省、あるいは、地方公営企業を扱う総務省、これは経営戦略、投資計画、財政計画を策定して、自立した市場経営をするということを求めています。
 ところが、東京都はそういう自立した市場経営を行う意欲も計画もありません。なぜだろう。
 これは、神田市場の「売却」収入で市場を維持できる、こういう経験をしたということが大きいと思います。いざとなれば市場を売って、そのお金で会計を賄う。こういうことができるのは東京都だけでありますが、そういう味をしめてしまったということだろうと思います。
 このPTでも経営戦略を立ててということでありますが、そこを絶たないと、絶つというのは絶つですね、そうしないと、本格的な経営戦略はできないということで、用地を切り売りして経営を維持するということではなく、もともと東京都の都有地は都民のものということですから、それを市場が使っているにすぎないということで、「管理権能」と「処分権能」を分ける。使用価値と財産価値を分けるということですが、そういう改革が必要なのではないか。
 市場当局に「処分権能」を与えないということになれば、売却収入を当てにする経営を改めて、自立した経営戦略を立てるということができるのではないかということであります。
 それの一番大きな例ですが、いい例、悪い例ですが、前回、ようやく示された神田市場の例が、21ページから23ページ、24ページまで、ずっとあります。
(24ページ)
表を見ていただくと、どういうふうに動いているか。
 以前、提起いたしました表では、例えば神田市場の例でいくと、財務局から市場に移転したお金が3,700億円。これを、ずっと「神田市場の売却収入」という表現でありました。本当に売却したんだというふうに思っておりましたが、売却というのは、普通は東京都から民間に売るということです。売却収入は、正確に言えば400億円です。
 以前の私がつくった表は、この400億と3,700億は調整するんだろう。だから、差額の3,300億は財務局にお返しするんだろうと思っておりましたが、そんなことはないということですね。
 じゃあ、幾ら返すかというような調整を考えていくと、
(23ページ)
この400億円で売ったお金は、外部に売りますから、東京都の財産価格審議会にかかります。財価審の適正価格は229億円です。このお金で割り戻していきます。
 土地の価格の下落と面積を割り戻していくと、229億円が適正だということになると、割り戻すと、神田市場の価値は、移転したとき2,043億円になります。差額は1,660億円です。
 こんなような計算もしてみると、適正価格でも1,660億円儲かっている。やっぱり返してもらわなきゃいけないんじゃないかというような逆算になります。
 いろんな計算ができるので、実際は400億円で売れたから130億ぐらいだろうとか。あるいは、民間だったら、3,700億の不動産を400億で売る不動産会社の社長は、それだけで不適格と、こんなことになるんだろうと思いますが、役所はそういうことはないので、3,700億円が400億円で売却されても、別におとがめはないし、不正はないと、こういうことになるということですね。
 これは非常に大きくて、今まで豊洲市場が一体民間に幾らで売れるんだ。あるいは、築地市場が民間で一体幾らで売れるのだという議論をしてきましたが、このシステムの中では、市場会計に幾ら移転するかということと、実際に民間に幾らで売るかということは関係がないということになります。そういう扱いが今までされていたということなので、ここは大きく変わってまいります。
(27ページ) 
築地市場の価値と現状でございます。
 築地市場の価値、これは築地のブランドであります。
 この「築地ブランド」、いわゆるブランドというのは企業の会社名であるとか、産地であるとか、そういうところにブランドの価値がある。
 その価値は、企業の譲渡の場合には財産的な価値、幾らと評価するかと、いわゆるのれん代ということになるわけですが、このブランド価値というのは一体幾らぐらいだろうかと。数千億円だと言う人もいるわけですが、その経済的価値は高いんだろうということであります。
 もう一つのグラフですが、
(32ページ)
このグラフで、いわゆる仲卸の数は減っているが、売場面積は減っていないというグラフです。
 使用料をとる立場からすれば、売場面積が埋まっていればいいということですが、築地のブランドを考える際に、仲卸の数がほぼ直線的に減っていくということになると、いわゆる専門的な商品を扱う店が減っていって、大きなお店ばかりになる。これで築地のブランドが維持できるのかという意味では大きな問題だと。
(31ページ)
それを計算しております。
 仲卸の数ですが、平成元年には180ありました。平成15年は882、平成28年、今は558です。
 このトレンドを見てみると、年間平均25です。10年後幾つになるか。このトレンドでいきますと、10年後にはさらに250減って300になるということで、300、これで築地ブランドが維持できるのかという問題があります。ということで、このグラフの意味するところは非常に大きいということであります。
 築地の耐震と土壌の問題ですが、土壌は後に豊洲と一括して議論をしたいと思っております。
(39ページ) 
4のまとめであります。
 東京都の築地市場について、これまでPDCAサイクルを回して経営をしていかなければいけないという議論をしてまいりました。なぜそれができないかということであります。
 築地市場の慣行というものがあって、これに東京都の当局も縛られて、機動的な経営ができない。これも直さなきゃいけない。そのためには、東京都の市場の組織改革が必要。また、思い切った民間の活力の導入が望ましいということであります。
 次のところで述べますが、豊洲市場を開場する。6,000億円をかけてつくった。これを早く開場させて資金を回収するという考えはありますが、我々がこれまで数字に基づいてきていた計算を行ったところ、あるいは東京都の計算でもそうですが、豊洲は開場した途端に大きな赤字を抱えます。豊洲単体だけではなく、豊洲はガリバーですから、市場会計自体が大幅な赤字になります。
 こういうことから考えると、このガリバーである豊洲が開場することによって、残りの市場の再編というものが加速化されるというふうに考えております。そのために業者団体の改革、あるいは業界の再編も必要になる。そのインパクトが極めて大きいということで、改革が必要である。
 改革の方向性、
(43ページ)
前回からずっと述べておりますが、水産物、食肉、青果の三つに機能分解して、再編をしていくという考え方があるだろうと。
(44ページ) 
図ですね。今のものですね。ページが変わってしまいましたが、青果、食肉、水産物、こういう三つの中で、ほかの市場をネットワークで結ぶ、こういう構想が一つの例としてございます。
 それから、44ページでございますが、これは一つの私どもの考えであります。
 豊洲市場を開場するということは、「今のままの築地」が豊洲に移転することではない。時代の変化を見てまいりますと、その将来像はIT+物流センター、これが強みだろうと、この機能強化である。
 同じように、築地改修案を出しておりますが、現在の築地市場を延長し継続することではない。「築地ブランド」を維持しながら、伝統と革新を融合させて、経済的に自立した食のテーマパークとして再生をする。今のままでは衰退する、いずれにしても。という考えであります。
 ですから、豊洲市場と築地市場。これは、ある同じものを豊洲に置くのか、築地に置くのかという問題ではなくて、これは目指す市場のあり方が異なるという考えであります。
 このことを図示しているものが
(48ページ)
今の市場の流通の荷物が分類してあります。
 Dが他市場への転配送です。Cが市場取引量、場外市場ですね。いわゆるスルーしていく荷物です。
 市場と競合している、競争している流通です。産直であるとか、あるいはスーパー、大手であるとかというのが、このDとCに強みがあります。この強みを取り入れていくというのが、豊洲市場のIT+物流センターの目指すところ。
 それでは、いわゆる市場と言われる仲卸がいて、物と金が一体に動くというBの領域ですが、このBのところが築地の改修、市場と食のテーマパークというコンセプトの中心であります。
 というように、豊洲と築地というのは、目指す市場のあり方というものが異なっている。こうやって生き残りをかけていくというのが、市場のあり方の考えでございます。
 以上が、まず第1章です。
 私からは以上ですが、それじゃあ、菊森先生と梶田先生、コメントをお願いします。

○菊森氏 今日の、この座長のお話というのは、前回もこれは頭出しをされましたが、豊洲市場というのは物流センタープラス、これはもうITによってサポートされた近代的な巨大な物流センターを運営していくという意味で、ビジネスモデルが全く市場とは違ってくる可能性があるというふうに私は理解しております。
 一方、築地ブランドというものにやっぱり裏づけられた、それはもう地域、エリアを本当に大事にしていって、日本の食を代表する、東京オリンピック・パラリンピックにおいても、銘打っていけるだけのブランド力を持っているわけですから、それを活用しながら仲卸業者の方々にも卸業者の方々にも頑張っていただいて、何としてでも経営が成り立つような市場にしていく必要があるだろうと。
 この二つが存在するように見えるわけですが、これはそれぞれ全く違った市場、あるいは物流センターという形で発展していくことができるんじゃないか。
 ただ、これをやっていくためには、ある程度の前提が必要になってまいります。
 食のテーマパークの部分は非常に発展性がありますので、世界に銘打つ日本食という、「築地のブランド」ということでやっていけると思うのですが、市場をきちんと運営していくという重要性というのは、これは変わらないと私は思います。
 したがって、47ページにも書かせていただきましたが、築地市場の経営戦略として何を求められるのかということなんですが、まさに強みが卸売業者と多様な仲卸業者とのネットワークが既にある。これによって、戦前から培われてきているので、ただ問題は、市場内取引というのは減少傾向にある。
 したがって、これを維持・増加させる方策として、三つ、私は仮に挙げさせていただいております。これ以外に、当然各卸売業者さん、仲卸業者さんの経営努力というのは当然必要になってくるわけですが、またそれをサポートするような中小企業政策というのも必要になってくるわけでありますが、それ以外で挙げておりますのは卸売業界、仲卸業界の再編を進めていく。これは自主的に進めていかれるということが望ましいんじゃないか。それから、仲卸業者の新規参入を何らかの形で認めていく。それから、卸売、仲卸業者の外資参入を認めることを検討されたらどうかという点であります。
 それから、一方、先に申し上げました豊洲市場というものは、これは実は地方卸売市場からも声が上がっているんですが、これだけの施設をおつくりになっているということで、まさに物流センターとしての活用を積極的に進めていったらどうかということなんですが、そのためには卸売業界が直接大手のスーパーであるとか、何らかのインターネット取引を行うような大手の流通業界と取引を拡大するということ。もちろん、仲卸さんがおられてももちろんいいわけなんですが、メインはその物流のところにメインがあるというふうに考えられるのではないかなと私は思います。
 当然のことながら、物流センターでありますから、市場のいろんなしきたりとかということをあまり考えなくても、具体的にどういうIT投資をするかというのは46ページに書かせていただいておりますので、輸送サービスの利便性を高める投資、環境負荷低減といったことをIT化で達成していくというような考え方で、IT化を進めていかれる。
 そうすると、この二つはそれぞれ特徴のある市場として発展していくのではないかというふうに私は考えて、こういった考え方がいいのではないかと思います。
 まず、ここまでは以上です。

○小島座長 梶田先生、お願いします。

○梶田氏 今、菊森先生に解説いただいた話にも通じるものがあるのですが、今回の議論の中で非常に重要なのは、まず、今、市場を取り巻く状況がどうなっているのかということを客観的に、あるいは、それを関係当事者も含めて、これからどうなるかということを、まずはきちっと共通認識。いろんな意味で、このマーケットがどうなっていくのかということをきちっと押さえるというところだと思います。
 それをもとに、豊洲、あるいは築地というふうに言っている、いわゆる具体的な職場といいますか、市場ですね。市場の関係者の方から言うと、いわゆる自分たちの働く場、ビジネスの環境。ここで何ができるか、どうできるかということを考えていく一番大きなそのイメージ、整理を、ある程度まとめたということになるんだと思います。
 くしくも、非常に性格の異なる役割になります。それがどういうふうになっていくのかというのは、どっちが正しいとかではなくて、それぞれが、これをもとにどういうふうに具体的に何をしていくのかということによって、どんなふうな姿に、あるいはどんなふうな市場として、あるいは食の役割を果たすのかということにつながるんだというふうに思っています。
 ところが、これがなかなか悩ましいのは、今までの議論は量的な取り扱いを中心にする議論が多くございました。今回の場合は、これは明らかに質をベースにして考えていく。それがどんなふうな形で進んでいくのかということを考えるためには、みずからがどういう経営をしていくのかということも考えなきゃいけないのですが、総体として、つまり、例えば築地で言うブランド。それから、豊洲の場合も、新しい豊洲のブランドをつくっていくことになりますから、個々の経営だけじゃなく、総体としての経営のあり方ということも、一つ、この「経営」というキーワードを軸にして考えていく。あるいは、それがどういう取り組み結果になっていくのかということを、今後見ていくということが必要になってくるんだというふうに思っています。
 そういう意味で、非常に今回のこの二つのプランというものの方向性というのが、大きく異なるということの性格を持って取りまとめができたというふうに思います。

○小島座長 この件について、御意見なり、ございますでしょうか。
 それでは、34ページの後です。築地の施設の課題が33ページ以降ございますが、34ページの土壌汚染は後で一括して議論することにして、耐震の話を、森高先生、お願いします。

(34ページ)
○森高氏 前回もお話ししましたが、築地市場施設の老朽化の問題があります。とりわけ耐震性が不足している建物が6棟ありまして、その中でも昭和2年に竣工した仲卸業者の売場が約2万平米以上あって、築地市場施設の大部分を占めているわけですね。
 今、首都圏でも発生の切迫性が懸念されております首都直下地震については、相当強い揺れを伴う地震になります。私自身の立場上、こういう地震に対して築地市場は相当大きな被害が生じるのではないかと思います。
 ここに書かれておりますが、不特定多数の観光客等々の方が出入りしているのは問題ではないかなということだけではなくて、市場で働いている方々にも、地震が起きたときには身を守るために、どのような対応をどうするかというのを啓蒙していく必要があるのではないかというふうに思っています。このプロジェクトチームでも、そういう課題はしっかりと指摘をしておく必要があるのではないかというふうに思います。
 恐らく、今の段階でハードな対策、いわゆる補強ですね。それは、営業しながらなので非常に難しいというのは、前々回にお話しされていましたし、それは理解しておりますが、それではソフトの対策をできるだけ考えられ得ることをしておく必要があるのと、働いている方にも、そういう意識を持って営業していただくというのも重要ではないかというのが一つです。
 それで、豊洲に移転するにしても、具体的に移転するまでに1年ぐらいかかる可能性があります。その間はどうするのかという話が一つと、再整備のときは、これは10年以上かかるかもしれませんが、それまではどう対応するのかというものもあわせて、具体的な対策がここには記載できないかもしれませんが、課題としてはきちんと盛り込んでおく必要があるのではないかというのが私の意見でございます。

○小島座長 時松先生、付け加えてございますか。

○時松氏 特に付け加えることありません。

○小島座長 ありがとうございます。
 また積み残したところは後ということにして、これが市場のあり方から考える豊洲、築地というような立ち位置であります。
(63ページ)
豊洲市場の移転案というところに移ってまいります。
 豊洲の問題は、いろんな事柄を議論してまいりました。二つの大きな課題があるということを指摘しております。
 一つは、お金の話であります。
 豊洲市場を開場した場合に、開場した途端に直ちに市場会計が100億円を超える赤字を計上いたします。
 それでは、これは一時的なことかというと、そうではなくて、今後も100億から150億円の赤字が継続します。これは当然減価償却を含んだ市場会計であって、建物の耐用年数を60年とすると、後に書いてありますが、1兆円にも上るという計算になります。
 減価償却を含まない収支というのを、市場のあり方戦略本部でも出しております。我々も出しております。
 じゃあ、この「減価償却を含まない収支」というのはどういう意味なのか。
 これは大規模修繕や設備更新の費用を留保しないと、とっておかないということですから、いわば豊洲市場は「使い捨て・使いきり」そういう施設であるという、こういう会計になっている。
 これを、「恒久的な施設」として使うならば、大規模修繕や設備更新の財源の手当が要るということですが、手当は検討課題というふうになったままであります。
 この手当については、実は、そのことについて赤字になるということについて、
(67ページ)
グラフ、これは市場当局がまた修正をしてきたものでありますので最新の数字になっておりますが、減価償却費を込みで考えると、豊洲市場だけで92億円の赤字であります。
 市場全体は、今、使用料110億円ですから、それにこういうものがのっかってくると、こういうことですね。
 減価償却を除いて豊洲市場はどうかということで、前は27億、8億だったかな、28億でしたね。これが現在減ってはいますが、豊洲市場だけで21億円の赤字。減価償却を除いても、こういう赤字になるということであります。これが今の姿ですね。
(63ページ)
もう一つの議論が土壌汚染対策であります。
 東京都はこれまで何をやってきたかというと、東京都議会の、「無害化した状態での開場」という付帯決議、これに対応した岡田市場長の「無害化3条件」というものを答弁をして、これによって860億円というお金を使ってきました。前回の専門家会議を聞いていても、あるいはここに書きましたが、井上委員からのお話も記載しておりますが、「無害化」というのは、現状において達成は不可能。あるいは環境基準の達成というのはできるかもしれないが、そんなにすぐにはできない。それから全部操業由来の汚染土壌を取り除くというのは当初から無理と。というようなことを書いておりますが、すなわち、現時点において「無害化3条件」というのは達成できないという状態になっております。
 移転するには、この議会の決議に基づく「無害化3条件」ということについての、これを今ロックがかかった状態にありますから、そのロックを外さないといけないということであります。
 このロックを外すにおいて、法律上安全、科学的に安全という理由で外すという場合には、これは土壌汚染対策法で形質変更時要届出区域に指定された段階で、既に法律上安全、科学的に安全ですから、860億円の支出は当初から必要なかったということになって、この支出の責任というものを追及しなければならないということになります。
 まず、この二つの大きな問題があります。
 まずは市場会計、先ほど申しましたが、6,000億もかけてしまった。早く開場して投資を解消しなければいけないと。これは無謀な試みであって、数字は開場すればするほど赤字が増えていくと。こういう施設であるという分析であります。これについては、我々のPTも市場当局も一致をしているということでございます。
 それでは、これについて、また菊森先生お願いします。

○菊森氏 今日は数字の一部変更がありましたが、大勢は従来の説明と変わっておりません。
 それで、通常ならば、減価償却というのは内部留保として次の投資に回せるということが大前提となって、水道会計もあるいは病院会計もそうなんですが、やることが多いんですが、今回は、そういう意味では十分な留保がないままに、恐らく減価償却の負担を負いながら、それが内部留保になかなかつながりにくい管理になってしまっているんじゃないかということを推察しているわけです。
 特に、減価償却だけの問題ではなくて、もう一つ大きな問題があるのは、今後のメンテナンスコストといいますか、ライフサイクルコストと呼んでいるものですが、これの見積もりをどの程度とっていくかというところが非常に大事なところで、こういったアセットマネジメントの考え方がないと、恐らく今後こういった大きな施設をつくる場合でも計画が立たないということになっていくんでないかと思いますので、今回ぜひそういう意味での管理を十分にするような体制を組んでいく必要があるだろうというふうに感じます。
 とりあえず以上です。

○小島座長 では、いいですかね。
 どうぞ。

○梶田氏 この試算は、恐らく今まで計算されてなかったので、今回このPTが初めてしたということになると思います。
 ですので、要するに、経緯を考えていくということの一つの説明というか、整理の仕方がこれですので、今後これはずっと考えなきゃいけない課題になります。それを金額として表現したということになるんだと思います。
 具体的にこういったことを管理するということをどういう手立てで、しかも、どういうコストをかけてどうしていくのかと。これを具体的に考えるという、そういう材料になったんではないかと思います。

○菊森氏 もう一回。

○小島座長 はい。どうぞ。

○菊森氏 豊洲市場を、先ほどの物流センタープラスIT化という組み合わせでもって運営していくことができるんではないかと。
 私は、ビジネスモデルの転換を図っていくということも一つの方策ではないかというふうに申し上げましたが、そういう意味では、市場として運営していく場合にはこれだけの赤字になるが、別のビジネスとしてこの場を使っていくんであれば、また別の言い方ができてくるんではないか。そういう意味では、収支計算をしてもう一度ビジネスモデルが変われば、それはそれとしてまた次に考えていけばいいのではないかな。
 私は、あくまでも、これは従来型の市場として使う場合にはこれだけの赤字が出るが、別のビジネスとして考えたら十分採算がとれるという絵を描くことを検討できるんじゃないかなというふうに私は思っています。

○小島座長 補足をしておきます。
(70ページ)
このグラフで、東京都の当局が資金収支の見通し「豊洲移転を行った場合」というのをいただいています。
 前提が築地市場跡地の売却により豊洲市場整備時に発行した企業債は全て返還が可能ということで、前提が築地市場の売却ということになっています。
 売却というのは、先ほどの神田市場の例で、実は売却ではなくて一般会計からの移転ということだということが明らかになっておりますが、そういうふうに一般会計からお金が入ったとしても、そのグラフの下に書いてあるように、豊洲市場の借金は賄えた、初期投資はそれで充当しますよと。当面は事業継続も可能ということです。
(71ページ) 
上のグラフを見ると、事業の継続性を見る上で、市場の建替財源等の確保について検討が必要。一応、使いきり・使い捨てではない、これからも使っていく。だけどお金がないんですというふうに書いてあるんです。
 その下のグラフの一番下の文言ですが、都の一般会計繰入金は、他の自治体と比較して、極めて低い割合で抑制的。これは何を意味しているかと、もっと税金を出せますよということを意味しているわけですね。
 ということで、この三つのグラフから何を考えているかということを推察したのが70ページの3)です。
(70ページ)
この豊洲市場開場による大赤字を営業で取り返すなどとはつゆ考えていないということです。それはもう無理なんです。
 ですから、これを税金で賄うというのが方法です。
 この税金で賄うという方法が第一が市場を切り売りして豊洲市場を延命させる。幸い11あります。もっと売れるということです。
 これが、神田市場を売ったお金で市場会計が維持できた。今度は築地市場を売ったお金で豊洲市場がお金を充当できた。お金がなくなってくれば市場を売って充当していけばいい。これがタコ足というか、タケノコというか、そういう財産切り売り生活という、こういうことになるわけであります。
 もう一つは、先ほどのように「30%までの税金投入は当然」というふうに考えるともっと税金を投入できる。こういうことを考えると、豊洲というのは大きな赤字、ガリバーの赤字ですから、先ほどのグラフから行くと、物凄く大きな施設、物凄く大きな赤字です。ほかの市場を食い潰しながら維持されていくという、こういう施設だということになりかねないということであります。
 これが数字から見る豊洲市場の市場会計ということなので、この問題は別に豊洲だけではなくて、ほかの市場の再編もやっていけないということも含めて、それを受け身ではなくて、積極的に豊洲市場を開場するということと同時に、11の市場の再編というのに直ちに取りかからないと市場会計自体が潰れていってしまう。これを危機をチャンスとなるかどうかわかりませんが、主体的に再編に取り組むという契機にはなるということであります。
 はっきり書き過ぎたかということなんですが、再編論者じゃないですけど、再編の梶田先生いかがでしょうか。

○梶田氏 軸足が、こうやって経営を考えていくというふうになると、一個だけの、いわゆる部分最適、個別最適だけで経営が成り立つという図式でなくなるんだというふうに思います。それは取り巻く環境が変わってきています。それによってどうするかということも変わってくると思います。
 自分たちだけでどうするかというのも考えなきゃいけない。考えなきゃいけない切り口がどんどん増えてきている、複雑かつ多様化しているんだということなんだと思います。それをたまたま今回これを取り上げて整理をしてみると、やはりお金がどういうふうに回っていくのか。
 これは経営の持続性という意味で考えたときに、どういうふうにそれを取り扱うのかということが、市場一つだけの自己完結だけではならないということにつながるのではないかなということだと思います。

○小島座長 ほかの方々、御意見はありますか。菊森先生よろしいですか。

○菊森氏 今回はそういう意味では青果と水産と肉という三つに3種類の市場に機能を分けて再編するということを考えていかざるを得ないということに一つの方向性をここでは示していると思うんですが、こういった動きというのは別に東京都だけではなくて、今後も全国的に出てくる可能性がありますし、当然、関東圏一円で、こういった、過去には検討されたこともありました。市場の再編というのは検討されて進めようとされたことはあったんですけど、なかなか調整がうまくいかなかったということがあるんですが、いよいよ今回もしこのような市場会計の維持が難しくなるということであれば、こういった再編というのは私は不可欠になるというふうに思います。
 以上です。

○小島座長 ありがとうございます。
 それでは、次のテーマに移りたいと思います。豊洲市場移転に当たって解決をしなければいけない、もう一つの大きな課題です。
 土壌汚染問題について、都議会の決議と岡田市場長の発言の「無害化3条件」というロックがかかっている。このロックをどうやって外すかという問題であります。
(74ページ)
どういうものであったかということを記述しております。
 まず、74ページの3)でありますが、平成22年3月23日の都議会の予算特別委員会の決議であります。
 土壌汚染対策について三つありますが、2で、「土壌汚染対策について、効果確認実験結果を科学的に検証し有効性を確認するとともに、継続的にオープンな形で検証し、無害化された安全な状態での開場を可能とすること。」これが都議会の決議であります。これに対応して平成23年2月23日の同じく予算特別委員会での岡田市場長の答弁でありますが、
(75ページ)
上です。
 「汚染土壌が無害化された安全な状態とは、技術会議により有効性が確認された土壌汚染対策を確実に行うことで、操業に由来いたします汚染物質が全て除去、浄化され、土壌はもちろん地下水中の汚染も環境基準以下になることであると考えてございます。」。
 この三つの条件は、土壌汚染対策法の中の組み立てからすると、論理的には筋が通っているということであります。
 まず、第2条件の土壌汚染対策をして、操業由来の汚染土壌は全て除去したと、こういうことになりますと、行政的にどうなるかというと、現在は地下に汚染土壌があるという「形質変更時要届出区域」の一般管理区域でありますが、操業由来のものが全て除去されたということになると、この管理区分が「自然由来特例区域」ということに変わります。あるいはそれもないところであれば「形質変更時要届出区域」の区域指定の解除という行政的な効果があります。
 この効果を出すためには、土壌汚染対策の実施後2年間地下水のモニタリングを行って、それが環境基準を満たしているということであります。それが確認されれば区域の変更あるいは指定解除が行われると。
 よくこの地下水のモニタリングの基準が環境基準で、こんなものは飲んでも大丈夫だとか、あるいは少しぐらい上がっても健康に被害がないんだという議論がありますが、これはそういうものではなくて、土壌汚染対策の効果を検証する、いわゆるモニターするための値が判断の基準が環境基準になっているということですので、別に飲むとかそういうものではありません。
 ですから、ほかの市場ではモニタリングなんかやってないじゃないかと、それは当たり前なんであって、こういう区域指定を解除したり変更しようとする行政的な目的がない限り、2年間のモニタリングは必要がないということですから、ほかの市場でやってないのは当然です。
 その問題でありますが、現状が
(76ページ)
4)です。この「無害化3条件」の達成状況であります。
 まず第1に「技術会議により有効性が確認された土壌汚染対策を確実に行う」ということについては、いろいろ議論はありますが、盛り土ということだったので、それは盛り土が行われていない。だから、今、「盛り土に代わる措置」というのを専門家会議が検討されている。
 2番目の「操業に由来いたします汚染土壌が全て除去、浄化され」ということについては、この場でも何回も言っておりますが、10メートルメッシュで調査をするわけですから、それに当たったところは除去しますが、当たらないところは除去できないということで、「操業に由来する汚染物質を完全に除去することは不可能」だと。できているかもしれないが、もともとそういうことは専門家として言えるわけでもないということであります。これは専門家会議で前回もそういうふうにおっしゃっておられました。
 3番目の「地下水中の汚染も環境基準以下になること」については、「遠い将来には環境基準以下にはなるだろう」と、前回の専門家会議でもこういうことでございます。これが今の現状ということですから、この「無害化」の付帯決議、それに対応する「無害化3条件」を達成できないということになると、このロックの解除をしないといけない。そのためには三つあるということが76ページの最後の4)最後の丸です。
 一つは、「無害化3条件」に代わる「安全・安心の基準」を明確化するということであります。
 二つ目は、その条件は860億円の支出を正当化するものでないといけない。あるいは、法律で安全だとなっているんだから、もう問題はないんだということであれば、これは当初からそうだったわけですから、860億円の無駄な支出をしたことの責任を明確にしないといけない。どちらかだと。
 それから三つ目は、今まで付帯決議に対応した「無害化3条件」を達成すると言ってきたわけですから、これを業者の方々や都民の方々に説明をしなきゃいけないと。この三つをしっかりやらないと、この築地の土壌汚染問題は解決しない。
 この問題は、前回の専門家会議での状況を見ておりましたが、ここの77ページ以下にも書いてありますが、これは専門家会議が判断することではなくて、あるいは、政治決断をして右だ左だと決めることではないです。
 まさに行政当局が、市場当局が、こういう考えならば安全・安心の、ほかの「無害化3条件」にかわる基準になりますということを考え立案し、そして説明し、知事の判断を仰ぐと、こういうプロセスなんだろうというふうに思っております。
(77ページ)
一番下の丸ですが、「よって」というところですが、これはこのPTの考えですが、専門家会議や技術会議では「汚染土壌が無害化された安全な状態」を求めていたわけではないにもかかわらず、どうして「汚染物質が全て除去され、土壌はもちろん、地下水中の汚染も環境基準以下になることだと考えてございます」というようなハードルの高い目標に変わってしまったのか。専門家会議としても、その経緯を明らかにしていただきたいと考えるのは当然のことだ。
 さらに言えば、
(78ページ)
下でありますが、この専門家会議や技術会議の発言・提言というのは「汚染土壌が無害化された安全な状態」の達成を目指していないということであれば、当初から、「無害化3条件」の第1条件である「技術会議により有効性が確認された土壌汚染を確実に行うこと」によって「操業に由来いたします汚染土壌が全て除去され浄化される」というものではなかったということになります。その説明責任はやはり市場当局にあると。このロックを外していただかないと、これに頬かぶりをして専門家会議に責任を押しつけたり、知事に放り投げたりすることはできないというふうに考えております。
 詳しくは、井上先生にお願いをしたいと思います。

○井上氏 今、座長のほうから大体の概要を御説明していただけたと思うので、少し、そもそも専門家会議、そして技術会議のほうで議論されて、答申された背景のところを、そこをもう一度振り返っておきたいと思いますが、専門家会議の答申です。
 平成20年度に出されたと思いますが、その時点では、これは土壌汚染対策法上以上にいわば上乗せをした安全対策が求められております。
 具体的に言いますと、土壌汚染対策法では、大気中の経路から人体に接種される有害物質、そういったことは現時点では想定されておりません。
 ところが市場という、我々都民が毎日食べる食品を扱うような場所で、大気経由であっても、それが直接市場で扱う商品に付着して、それが体内に入ってくる、そういうリスクは十分考えないといけない。上乗せ的なものとして、大気経由の経路をそれを遮断するなり、そういったことを求めておりまして、それが、いわば一つのやり方としては盛り土ということになります。
 なぜその盛り土が必要になってくるかということですが、それは今、座長のほうから御説明があったように、専門家会議の議事録等を見ていますと、例えば、この報告書の中の、77ページの下から二つ目の丸のところにも出ておりますように、「極めて小規模なパッチ状に存在するタールの溜まり」等があって、その中にベンゼン、シアン等が残置されている。実際にそういったものも幾つか目視で確認されていたわけですが、これは、全部を取り除くことは非常に困難。多分、土壌を全量、その汚染が想定される深度プラスアルファのところまで撤去しない限り除去は困難であろうということで、そういったものからベンゼン、シアン等が、地下水の浄化を終わった後にまた再溶解してくる。そういって再溶解したものが、想定としては、ベンゼンですと1.何ミリグラム/以下のレベルに保たれていれば、それで盛り土層をつくっておくことによって、それは市場まで上がってくることは完全に防げる。そういうような方針で臨まれています。
 いわば、そういったところが豊洲での土壌汚染対策で、そこまでやる必要があったという一つのものであっただろうというふうに自身は思っておりますが、現実にはそれが盛り土がなされていなかったということが実際に起きているところがもう一つ大きな問題であります。
 いわばそういうような経緯で、当初は専門家会議等で土壌汚染対策が提言されていたんですが、先ほど座長からもございましたように、それがどうも実際の都庁のところで、途中からそこが少し変わってしまっているというところです。ここのところが十分、これまでまだ議論されてきていないというところが一つ大きな問題であろうと。
 ここを明らかにしていかないと、座長が言われたように、これから先に進んでいけないだろうというふうに思います。
 補足的なところですが、以上でございます。

○小島座長 ありがとうございます。
 それに関連して築地のほうの土壌がありますが、36ページ、主に34ページのところからあって、それから豊洲の状況もあります。
 一言、先に。
(37ページ)
豊洲の状況が書いてあります。豊洲は徹底した調査を行っているので、全体がよくわかっているということなんですが、豊洲の場合の最高値は、よく言われるベンゼンの環境基準の4万3000倍、シアン化合物860倍、こういう数字が出てきている。
 ここで、土壌汚染対策法上は、飲まない、あるいは、触らないということで、対策はもう十分。形質変更時要届出区域だということで、それで十分なんですが、地下にベンゼンが4万3000倍もある汚染土壌があるとか、シアン化合物が環境基準の860倍だと、こういうところで生鮮食料品を売る人、買う人、商売しましょうと言っても、なかなか来てくれないということで、それでは、皆さんが来ていただけるようにするにはどうしたらいいのかということを考えて、安全と安心の基準。
 そういう意味では、豊洲市場における安心の基準というのは心の問題ではなくて、「無害化3条件」という形で明確に示されているものなんです。
 なぜそうしたかというと、やはりこれだけの汚染があって、市場の関係者に来ていただく、売り主も買い主も来ていただくためには、通常の土壌汚染対策以上の徹底した対策が必要だというふうに考えた。それが、「無害化した状態での開場」を可能とすることであり、「無害化3条件」をやるというふうに東京都が約束したということなんだろうと思いますが、そのことと、専門家が、いわゆるエンドースしたこととの落差が大きいというのが、今の問題なのではないかというふうに思っています。
 築地について、井上先生、お願いします。

○井上氏 築地と豊洲を同じレベルで比較するものではないだろうというのが、まず最初にあると思います。
 築地に関しては、まず、事実ははっきりとさせないといけない。少なくとも地下の状態というのがどうなっているのかというのが、現時点では、ほとんど調査されていないので、その概要は早急につかむ必要があり、その結果を踏まえて、築地の再整備ということも、それから、あるいは売却というようなことを含めても、もし仮に、大規模な、かなり深刻な濃度の汚染が存在したとすると、いろんなプランを全て一から見直さないといけないようなことになりますので、まず、その点をしっかりと調べる必要があるだろうと。
 これは、次のことを考える上で早急にやらなくてはいけないことだろうというふうに思います。
 じゃあ、今、東京都は調査をしているのではないかということですが、これは報告書にありますように、
(35ページ、36ページ)
今、東京都で築地の調査をしているのは、全域をある程度系統立てて調べているわけではなくて、工事の状況上、調査しなくてはいけないのに、してこなかった8カ所についての調査で、表層を調査して若干出てきたということで、これからボーリング調査を行うということですが、この調査は当然、継続してやる必要がありますが、これだけで築地の汚染の概要、概況を把握するのは足りないだろうと。もう少し追加の調査が必要であろう。
 それからあと、調査内容になりますが、これは豊洲での結果も少し参考になるところがあると思いますが、土壌汚染対策法ですとか、東京都の環境確保条例などでは、ボーリング調査をすればいいということになっていますが、豊洲でボーリング調査をして捕捉された土壌汚染の地点数というのはそれほど多くなくて、そのボーリング孔を利用した地下水の調査、それによってかなりの数の汚染が捕捉されているということがありますので、せっかくやったボーリング孔を利用して、地下水の調査まで行う。これは続きの作業としてできることですので、それはぜひ早急にやるべきであろうと。
 その調査の結果を踏まえて、先のことは考えるべきで、あと、話の順序が逆になってしまいましたが、地歴調査上は汚染が懸念される、昔の海軍の施設ですとか、あるいは、終戦後、米軍が洗濯工場等を設けていたという、そういう歴史がありますので、何らかの汚染の可能性はある。その可能性について、それがあるのか、ないのか、規模はどの程度かというのを調べる必要はあるということだろうと思います。
 ただ、これを、例えば豊洲のように、豊洲ですと4000地点以上の調査をやっておりますが、その同じメッシュで最初からやる必要はなくて、もっとずっと数を減らした、ただ全域をカバーできるような調査をという、そういう意味でございます。
 以上です。

○小島座長 ありがとうございます。
35ページの、まだデータが出る前に、先走っていろんなことが言われていますが、築地の土壌汚染の評価というのは、全体的な調査データがそろった段階で行う。しごく当たり前のことなんですが、
36ページの上に書いてありますが、これもそうですね。
 もし第一段階の調査、今、井上先生がおっしゃっていた、第一段階では土壌汚染対策法ガイドラインに従った10mメッシュの調査である必要はなく、50-100地点を調査して広範囲に広がっている汚染の有無を確認するということで、これは地下水の、今おっしゃったようなやり方でやる。
 もし、第一段階の調査で、高濃度・広範囲の汚染が確認された場合には、改修、売却いずれの場合にも抜本的な見直しが必要になる、こういうケースですね。
 こういうケースは、現在4,386億円という、築地の、いわゆる「売却」価格、こんなお金にはならないということですし、環状2号線の工事にも影響が生じるということになりますので、いわゆる、その段階でまたこのリスクの範囲が及ぶ範囲というのも、今から考えておかなければいけない。
 汚染があるのに4,386億円というのはあり得ないということであります。ということなので、これも、いろんなところに影響をしてくるということであります。
 そういう意味で、あまり先走るというよりも、今も、ただ、営業をしているので、優先順位としては、環境確保条例で違法状態にある状況を改善するということで、まずは8カ所ということが優先し、しかし、今後、改修、あるいは環状2号線もそうですね、土をいじる場合には、そういう調査をしなきゃいけないということでございますので、これはしっかりやっていくということになるというふうに思います。
 豊洲市場の移転案、もう一つは、豊洲市場は、これまでずっと議論をしてきましたが、使い勝手がよくないというようなことであります。
 80ページの2は飛ばしまして、
(82ページ)
3のところは、これは、一言申し上げておきますが、当初、豊洲は5,884億円使った、これの経過が不透明じゃないかという、別のチームがこの経過を分析していた。ここの経過が不透明だ。
 この経過が不透明であるということと、豊洲を開場することは、関係がないから切り離して考えるというお話がありました。市場PTのこの議論は切り離して考えられないということです。
 これは、コストを削減するという意味において、そうなんですが、いわゆるライフサイクルコストの議論からすると、建物を建てたお金よりも、後のお金のほうがたくさんかかるんです。60年間を考えると、メンテナンスコスト、大規模修繕、設備の取りかえ、こっちのほうがお金が随分かかるわけです。
 多くの場合、納入した業者がメンテナンスをやり、納入した業者、あるいは納入した業者の関連会社がメンテナンスをやり、設備の更新をやり、大規模更新をやる。
 ここで、安易にそのままやっていると、高価格体質、つまり、最初の建物を建て、設備を納入した段階での不透明さが開場後も維持されてしまうということになります。
 ということなので、82ページの2)でありますが、その不透明さが開場後のメンテナンスなどにおける費用支出にも引き継がれるので、2)の丸の三つ目ですが、開場後のメンテナンスや更新については、納入した企業に当然のように依頼するのではなく、契約を厳しく洗い直し、透明かつ費用効果的になるような企業を選ぶ、これが、その不透明さを切断するために必要だという提言を行っております。
(84ページ) 
4でありますが、市場会計への影響は極めて大きい。
(86ページ)
 豊洲市場の個別の課題であります。
 豊洲市場の個別の課題、コールドチェーンでありますとか、豊洲市場へのアクセスでありますとか、買い回りでありますとか、いろんな不都合がある、不具合があるということを検証してまいりました。
 これについては、市場当局も、市場を使いながら、不具合を直していく、こういうお考えです。いろいろとお答えをいただきましたが、一括して言えば、市場を使いながら、不具合を直していく。ルールをつくるとか、あるいはミラーを大きくするとか、そういうことをお話しされています。
 問題は、それはただではないということであります。
 これまでも、バースが足りないから屋根をつけてくれとか、あるいは、駐輪場にぶつかるから屋根をつけてくれとか、いろんな要望がありました。こういうものを逐一やっていくと、数十億、あるいは100億単位にもなりかねない。ただでさえ赤字だということで、今、指摘しておりますが、市場を使いながら不具合を直していくというのは、ただではない。さらなるお金がかかる。これはキャッシュが出ていくということです。
 ということなので、そこも含めて、いわゆる市場の会計というのを考えなければいけないというのがお金の話です。
 ここについては、いろいろありますので、コメントされる方はございますでしょうか。
 前回行いました構造の問題は、もとに戻っておりますので、それはそれでよろしいですよね。
 よろしいですね、竹内さん。

○竹内氏 はい。

○小島座長 そのほかで、何かコメントありますか。

○竹内氏 不具合及び使い方に関してですが、コールドチェーンとして、かなりの部分の、冷房なんですけど、冷房をするだけでも相当大きなところで冷房をするので、費用がかかっているということがわかっているということを、市場の方がメンテナンスも含めた上で、安く、リーズナブルにやっていくのかということは、今回はまだそこまでの、御指摘をしているだけですので、今後、そこをどう改善されていくのか見守っていきたいなというふうに思っております。

○小島座長 ありがとうございます。
 ほかにございますか。
 はい、時松先生。

○時松氏 あまり大したことではないんですが、84ページの括弧の中の、一番下の3番目の記述ですが、これは、次の築地のほうに持っていったほうがおさまりがいいんじゃないかなと思います。

○小島座長 そうですね。では、修正の御意見で、修正いたします。ありがとうございます。
 そのほか、ございますか。
 なければ、次のⅢ章に移りたいと思います。
 それでは、Ⅲ章でございます。Ⅲ章は、築地改修案です。
(107ページ) 
築地改修案は、二つ、絵があります。上が今回議論しているものでございまして、下のツインタワー、これも将来の検討事項でありますが、築地市場の取扱量の減少傾向を考慮すると、敷地の余地は十分あるということで、この余地を残しているという、将来構想として、議論が輻輳しますので、そういう整理をして議論を進めたいと思っております。
(108ページ)
 築地改修のコンセプト。
 いわゆる食のテーマパーク築地市場(つきじいちば)ということでありますが、市場機能の充実、技術伝承の場、観光拠点ということであります。
 1、2、3とあります。新しくなれば、老朽化に伴う問題は解決する。築地改修は、築地市場の再生。現在の市場取扱量の減少傾向の中で、その傾向に底を打って、そこから再生するという意味での「築地再生」。
 テーマパーク築地市場(つきじいちば)というのは、伝統と革新の融合、「築地ブランド」を維持発展させ、自立した市場、いちばを形成すると。必ずしも卸売市場法にとらわれないが、市場機能を確実に果たすことができるよう設計すると。
 菊森先生にも、市場法の中でどれだけ自立できるか。卸売市場法は保護ではありますが、同時に規制であります。いろんなことをして、お金儲けをして、その市場を安定化していく。つまり、中核的な事業がだんだん小さくなってくる。これを維持するためにはお金が必要だと。ほかで稼がないと、これが維持できない。
 この方法が、税金ではないとすると、この立地を生かして稼いでもらうと。このことを考えると、今度は、この保護・規制の卸売市場法というのが邪魔になるということもあります。
 必要なのは、その卸売市場という服を着ることではなくて、東京都の、あるいは、その首都圏の食の安全で安定的な供給をするということであります。現に、かなりの部分は市場外で、今、東京でも供給をされている。いわゆるスーパーが市場を通さない、あるいは産地直送で料理店が魚を仕入れているというのがあって、その中の一つの流通ルートでありますから、その機能をどうやって維持していくかというふうに物事を考える。
 必要であれば、あるいは要件が合致すれば、市場法の市場ということでもいい。そういうような思考方法をとっているということであります。
(115ページ) 
これを実施していく上での選択肢であります。
 竹内先生、佐藤先生にいろいろお話をしていただきました。どこが違って、どういう選択肢があるのかということが整理できたと思います。
 一つは、営業しながら改修するという1案。あるいは、移転して改修するという2案。それから、その方法について、当初から築地改修案は、民間的な手法を導入するというふうに言っておりました。これがA案ですね。
 なぜならば、これまで行われた大きなイノベーション、営業しながら改修するというのは、民間で行われていたものであります。民間の場合には、企業が、「はい、こちら。はい、次にはここに移って」という指揮命令がはっきりしております。それによってデパートの売場も変わり、あるいは駅の通行ルートも変わるということが指揮命令でできるという、そういうケースでありました。
 そういうケースであればということなので、それを民間的手法導入というふうに、A案にいたしました。
 従来通り都庁主導というのは、現在の卸売市場、特に築地は、業者との協議会があります。協議会で了解を得ながら一つずつ進んでいく。いわば、行政はお金よりも手続が大切ということですので、多少お金がかかっても手続を重視する。民間は経済合理性を考えるので、指揮命令もはっきりさせて、費用効果というものを第一に考える。こういう違いがあろうかと思っています。
 この二つをマトリクスで書きますと、四つの象限ができるということで、民間的手法を導入した場合には、従来の工期7年。それから、今回は、レストランだとか、時計台とかが入っておりますので、付加した建物を入れて878億円ということになっております。
 移転して改修というのは、工期3年半、設計1.5年+2年。場内での移転費用を除いて約800億ということになります。
 この民間的手法の場合には、この工期7年、工期3年半の前に、都庁の中での意思決定の期間というものが加算されます。なかなか新しいことをやるというのには時間がかかるのでありまして、これは、都庁内のリーダーシップの問題ということであります。
 従来通り都庁主導、B案の場合には、営業しながら改修は、工期15年。事業費1,388億円。
 移転して改修の場合には、工期7年。調査5年+工事2年。事業費が991億円。こっちの場合は、今までのやり方ですから、都庁内での意思決定のための期間が加算されるということはないということであります。
 特にここです。3番のところについて、竹内先生と佐藤先生にコメントをお願いします。
 佐藤先生からお願いします。

○佐藤氏 では私から先に申し上げます。
 今、非常に明確に整理していただきまして、ありがとうございます。
 今の民間的手法を導入した場合に、意思決定で、都庁内の意思決定の期間が加算されるというコメントがございました。これについて、大まかに、私として、どのぐらい期間がかかるかというのを申し上げたいと思うんですが、まず、整備の方針を検討して、民活でやるのか、従来手法でやるのかというところを検討するのに、恐らく1年ぐらいかかってしまうんじゃないかという感じがしています。
 もし民活でやるぞと決めたときには、実は、民活に出すための要求水準書というものをつくらないと、というのは、どういう仕様のものを都庁が求めているかということを明確にしない限り、とんでもないものができる可能性があるわけです。ですから、それを明確に規定するために、少なくとも半年ぐらいの期間は、緻密にやると、必要になるだろうと。
 その要求水準書ができた段階で、こういうことで業者を募集しますよということで、公に募集をします。それから、業者は、その要求水準書に沿って、本当にこれは儲かるのか、儲からないのか、どういう手順でやれば安くできるかというような、具体的な検討をします。その検討をするのにも、私が参加したPFIの事業では、半年間の期間を使わせてもらいました。
 それから、さらに、審査の期間があって、審査期間が約3カ月ぐらいありましたから、実際には9カ月ぐらいの時間を要していました。
 ということで、どれだけ早くやったとしても、6カ月が3カ月になるかわかりませんが、最低限その期間だけでも、半年以上かかるんじゃないかということで、合計すると2年から2年半ぐらいかかるだろうというのが、私の一応試算でございます。
 もう一つ、先ほど申しました要求水準書を作成するに当たっての問題点なんですが、ローリング整備を行うときに、市場業者の方々の移転調整を誰が行うのかというのを盛り込む必要があると思います。
 これを民間でもしやりなさいよといった場合には、先ほどの調査、計画の1年半の中でそれをやってしまわないといけないということになります。工期7年の厳守と、移転調整のリスクというのが、果たして、その1年半の中でできるのかという、民間に対して、そういうリスクが負えるのかということが、民間にとっては非常に大きな問題になろうかと思います。
 逆に、その要求水準書作成前までに、発注者が市場業者と合意形成しておくということも考えられます。この場合には、誰が、いつ、どこへ移動するかという合意をつくらなければいけませんから、計画内容が事前に決定されて、それで順番に移ってきますよということで、ローリングの手順に反映されます。
 ということで、決めればいいことなんですが、そこにはある程度やはり時間がかかるでしょう。さらに、もし問題が発生したときには、それは発注者が責任を持つことになる。
 もう一つの問題は、その要求水準書作成前にそういうことを決めちゃうということは、計画内容が固定化されますので、民間の知恵が生かしにくいということも、問題点というか、マイナスのポイントとしては起こり得るでしょうということがあります。
 それから、2番目の問題としては、土壌汚染とか文化財の調査というのが一応必要だろうということでございます。どのぐらいの土壌汚染対策をするかというのは、本当に、実際に調査してみなければわからないということも、先ほど、井上委員からございましたが、これが発生したときに、どういう処置をするかというのは、しっかりと要求水準書の中に盛り込まなきゃいけない。それが発生した段階で、市場業者の人に対していろいろ不都合が起こるわけですから、そういう遅延の対応、遅延期間がどのぐらいになりそうだというような展望を示すとか、あるいは、もし不都合なことがあれば、営業補償の話等にも発展するかもしれません。
 民間整備業者に対する、民活でやる場合に、彼らもやはり遅延が生じると。せっかく準備して、揃えていた社員なり所員なりを、何年間か遊ばせるような状態にもなるかもしれませんので、そういうところの取り決めに対しても明確に、あらかじめ記述をしていかなきゃいけないというような話があります。
 さらに3番目の問題として、以前から随分私は指摘しましたが、仮設建物の処分について。民活の場合は、これは民間整備ということで、計画通知ではなくて確認申請になります。民間が確認申請を出すという形になります。その場合、要求水準書については、仮設建物の処分を発注者の責任で解決すると明記をするのか、仮設建物の継続使用は、民間の責任で解決しなさいというふうに書くのか、この辺についても一つ大きな問題がある。
 といいますのは、今非常に宙ぶらりんな状態でずっと引きずっていますので、そこをやはり明確にしない限り、要求水準書としての体をなさないんじゃないかというような問題点があるというふうに感じております。
 もう一つ、先ほど整理していただいた115ページの上の表なんですが、意思決定の期間が加算されると同時に、従来のB案のほうでは、不確定要素というのを盛り込んでございます。工期のほうにも各ローリング工程で、約1年くらいの不確定要素に対応する時間というのをとっておるんですが、このA案のほうは、そういう可能性がありますよと、言葉では述べられているんですが、具体的にこの数値の中には反映されていないということを明確にしておきたいと思います。
 さらに、不確定要素の見積もりも、B案のほうではある程度、仮定条件を立てた上で、179億とか173億という数字を出しましたが、これもA案のほうでは不確定要素は土壌汚染の、基本的な土壌汚染対策は含んでいますが、それ以上になった場合の不確定要素については含んでいないということの違いがありますということを申し上げておきたいと思います。

○小島座長 じゃあ、竹内委員。

○竹内氏 佐藤さんと議論させていただいて、いろいろなことが、逆に僕も、不確定要素の話とか、非常に、どのようにしたらいいのかというところの御指摘はまさにそうだなというふうには思っておりまして、こう併記させていただくことによって、何が違うのかというところがよくわかって、よかったなというふうに思っております。
 今、佐藤さんがお話いただいた、PFIという方法は、要求水準書をつくって、それを民間の設計事務所なりゼネコンなりが動かすような形で始められるという、PFIの方式のやり方だったと思うんですけど、その要求水準書をつくる前から、民間の活用を入れていく、PPPであるとか、そういった形でやる、事業者に要求水準書のレベルを手伝わせるというか、つくってもらえるような民間の方法もありますので、その場合には要求水準書と計画をつくるところが並行して進むというようなことができるのではないかなというふうに思っています。
 また、それが楽観的なんだよというふうに言われる可能性はあると思いますが、今の佐藤さんのおっしゃっているPFIではないやり方もあるということで、もちろん、それをどう決めていただけるのか、都庁がどう意思決定されるのかということはありますが、その一つのやり方だけではないというふうに考えております。
 それから、土壌汚染対策、文化財に関しては、確かに不確定要素として大きくあります。
 文化財に関してはわからないですが、またこれも楽観的かもしれませんが、環状2号線のところに大名屋敷があったというところで、そうではない部分というところが、これも楽観的な話ではありますが、文化財というものに対しての不確定要素はあるものの、いろいろな米軍で使われていた土地の跡地であるとかは、特にそれ以上出てこないというふうに考えますと、比較的、予想はできないんですが、そこの部分は明記しながらも、民間活用の中でやっていけるのではないかというふうに思っております。
 それから仮設建物の処分についても、全くおっしゃるとおりで、どのようにして確認申請を出すのかということがありますが、大きな流れとして、仮設建物の除去を最終的な段階で考えております。
 仮設建物を最終的にはなくした形で、一番いい形、適法な状態にすることを前提に計画を進めてまいりますので、今のままの宙ぶらりんよりは、はるかに法的には進んだ状態になるということを考えますと、計画通知か確認申請かという部分に関しての差は大きくないのではないかというふうに考えております。
 それから、最後に不確定要素を盛り込んでいないというふうにお話いただきましたが、私の試算の中の一番下に、予備費というものがありまして、予備費を10%程度見させていただいていますので、そこでの対応を考えております。
 今日のPTのお話の、今までが佐藤さんとの対応の話ですが、今回、このような形で、民間的手法なのか、従来どおりなのかということも含めながら、営業しながら改修していく、それから移転して改修して戻ってくるというような、いろいろなバリエーションが示されたということで、ほかにもいろいろな組み合わせがあるのではないか、築地と豊洲をどちらも売ってしまう、どちらかをやるときに、どちらからを売ってからやるという、そのお金を当てにしないということであるならば、さまざまな組み合わせがほかにも考えられるというふうに思いますが、築地市場の改修の可能性が相当増えたのではないかというふうに、今回の報告書の内容に参加させていただきながら、そういうふうに思っております。
 以上です。

○小島座長 菊森先生、民間的手法の導入について、コメントをお願いします。

○菊森氏 ここで民間的手法導入A案のところで、
(116ページ)
特定目的会社の設立をしたり、あるいはPPPなどというふうに書かれておりますが、ここは非常に柔軟に民間的経営手法を導入していくということを考えたほうがいいんじゃないかなと思います。
 ただ、ローリング手法を用いても、実際にはPFIをやっている例があります。
 長崎市民病院という、みなとメディカルセンターというのが、まさにローリング的な工事手法を使うことを大前提として大成建設が受託をされて、PFIとSPC、特定目的会社を設立して経営していると。今も経営しているということでありますが、ステップ2がこの築地市場のほうはかなり多いので、その辺をどのように安全に進めていくのかということが一つあるかなというふうに思います。
 民間的経営手法でもってのポイントで、SPCを中心に進めていくということの背景というのは、工事費をいかに削減できるかということと、いろんな、そういう意味では、新しい収益源、あるいはコスト削減の要素というのをどのように民間的な発想で見出していくかと、それを適用していくかということによって、総工費をかなり削ることもまた可能であると、そういうチャンスを残すという意味で、民間的手法の導入をぜひ考えていくべきではないかなというふうに私は思います。
 残念ながら、この豊洲市場の場合は、当初PFI可能性調査をおやりになったというふうには聞いておりますが、土壌汚染の問題であるとか、さまざまな障害があって、PFIの導入ができなかったという結論に至っているわけなんでございますが、あのころと、また今は大分違いまして、この民間的手法の導入もさまざまな手法がありますので、ぜひ今回もしこの築地市場改修を進めていくに当たっては検討していただけたらと思います。
 以上です。

○竹内氏 ちょっといいですか。

○小島座長 どうぞ。

○竹内氏 一つ、民間的手法ということで、その一つの代表例が神田跡の開発のダイビルとかの、あのエリアの再開発があるというふうに考えています。
 非常に短期間の間に、あの大きな再開発をまとめながら、建物を建て、コンテンツを、テナントさんを入れていくというようなことができておりますので、そういった形の応用を築地でもやることで、よりリーズナブルに開発、それから、さまざまな不確定要素がある中でも、いろいろな可能性が考えられるのではないかなというふうに考えております。
 以上です。

○小島座長 はい、どうぞ。

○佐藤氏 今の件なんですが、民間的手法を導入した場合の、先ほど申し上げた市場業者さんの移転調整みたいな話は民間会社がやるということですか。

○竹内氏 そういうことも含めて、民間がやったほうが、よりスムーズではないかというふうに思います。

○佐藤氏 その際に、1年半という非常に短期間で、いろんな御意見をお持ちの方が市場にはいらっしゃると思うんですが、そういった調整が十分できるというふうにお考えですか。

○竹内氏 先ほど座長からもお話がありましたように、今の協議会方式のような形では難しいと思います。
 もっとドライに、テナントビルでやるように、オーナーとテナントという関係がはっきりして、個別に契約するか、しないかというようなことが決められるのであれば、それが市場法と絡んだときにどうなるのかという話は問題があることはわかっておりますけど、そういったことを超えて、テナントとオーナーという、いわゆる普通のテナントビルの、ビルテナントとか、みんなありますよね。そういうものと同じようなやり方ができたら、1年半の中で可能ではないか。
 だから、そこができるかどうかというのも、どこまで民間に任せられるかということの判断を都がどのくらいするかというところと関係してくると思っています。

○佐藤氏 そうしますと、市場のガバナンスを変えるチャンスでもあるという意味合いなわけですね。

○竹内氏 はい。

○小島座長 市場のガバナンスについて一言。
 ここに書いてあるんですが、先ほど菊森さんもおっしゃった新規参入なんです。
 先ほどの仲卸の数が減っているにもかかわらず、店舗が減っていないというグラフがありました。
 これについて、実際は築地市場へ行ってみると、使用禁止というところがいっぱいあるわけですよ。何で埋まっているの、使用禁止じゃないのかと。こういうことなんですが、使用料はもちろん取っていないけど埋まっているということなんです。
 これは、卸売業者間の中の営業譲渡をしていて、実はもう新しい人たちが買っている。だが、使わないから使用禁止だと。
 これは、役所としてはどうかなと思っているんです。これは使用許可を与えているんであって、営業譲渡の話ではないはずなんですね。役所と許可を受けた人との関係なんであって、おやめになったら、それはそこは空いたんであって、次に新しい人についてはどういう人に許可を与えるかという問題で、民間が営業譲渡しましたから、役所はこれに従って許可をおろしてくださいと。本末転倒ですよね。
 これが慣行なんですが、それも含めてガバナンスを変えていかないと、これは役所が管理しているわけですから。許認可を与え、なおかつ使用許可を与えるということですから、これは、もうほとんど役所としての責任を果たしていない。こういう慣行も、実は変えなきゃいけないんだろうというのが、役所の権限と責任を発揮していないということですね。
 たくさん変えなきゃいけないことはあるんだろうと思いますが。
 梶田先生。振ろうと思ってごめんなさい。民間的手法の例とかありますか。

○梶田氏 厳密にどう取り扱うかという議論はあると思うんですが、この話は、ずっと経営ということをベースに整理をしてきましたので、そのためにどう進めるのかという事業の具体的な実現の進め方、これも経営という軸足で考えたときに、どういう取扱いができるのかということを明確にする必要がある。それがこの一つの考え方だと思います。
 その流れとして、端的にスピード感というか、経営の中で非常に重要視されるのはスピード感、時間軸をどうするか。それをどのくらい精緻に見通せるか。それでもって実際に実施してみて、どの程度効果や結果や成果が出るか。
 こういった、常に取り扱っているサイクルをどういうふうに当てはめるかということが、多分、経営ということになってくると思うんです。
 このキーワードに基づいた形でのプランの整理というのが、一つの整理になっているのかなというふうに思います。

○菊森氏 よろしいですか。

○小島座長 はい、どうぞ。

○菊森氏 恐らく、この民間的手法導入の一番真骨頂はなんなのかといったときに、経費の削減とか、築地市場改修に伴う経費のコストの削減とか、投資額の削減ということはもちろんあるんですが、これトータルに、この施設全体を今後どのように運営していくのかという意味で、先ほど梶田さんがおっしゃったような、経営的な発想というのが必要になってくるわけで、そうなってくるとビジネスプランとも密接に、表裏の関係にあるということになりますから、当然、採算性を含めた事業計画というのが、その裏ではつくられていくということで、同時決定なんですね。
 そういう形でもって民間的手法をさらに1歩進めて考えることも可能かなと。こうなって初めて、民間的な経営手法が生かされるということだと思います。

○小島座長 ありがとうございました。
 最初のところ、いろんな、今ちょうどこれがグラフが出ているんですが、今梶田さんがおっしゃったスピード感というのは非常に重要な要素なんですね。
 取扱量、取扱金額がどんどん減っている。それから、お店をやる人もどんどん減っている。この斜陽産業の要素を全て揃えている中央卸売市場というのが、底を打って再生をするということを考えると、時間をかけていると、20年たちましたということになると、もうなくなっているかもしれないという。このままだとですね、残っているが。
 だから、活力があるうちに、再生の方法を考える。新しい業態を考える。
 豊洲にしても築地にしても、一つのイメージが今回あるわけですが、そうやって生き残っていかないと、今のままずるずるいって、まさに右肩下がりの取扱量、金額、それから、働いている人々、みんな右肩下がりで、ぐずぐずしていると、それは対策を打つ前になくなってしまう。
 という、このグラフの見方で、どこかの段階にいくと、それはいわゆる大きな基幹市場としてもたなくなるということになる。だから、そういう意味ではスピード感が非常に大切で、まだ力があるうちに新しい対策を打って、この再生をしていかなきゃいけない。そのどちらか。つまり、市場外流通と戦うために、みずからが市場外流通になってしまうのか、あるいは市場外流通とは別の生き方をするのか。そういう選択ですね。
 これも活力がないと、公共事業でずっとやっているうちに人がいなくなる。
 過疎地と言っちゃいけないですね、補修なんかで立派な幼稚園とか小学校をつくるんですが、でき上がったら子供がいなくなるみたいな、そういう立派な小学校や幼稚園ではいけない。中に入る人、人が中心だということなんだろうと思うんです。
 いろんなやり方があり、どれを選んでいくのか、あるいはどれができるのかというのは、まだわかりませんが、今回そういうメニューが揃っているということだろうと思います。
 それから、個別の事柄についてですが、先ほどの仮設建築物の問題が、ローリングでやる場合の法律手続の問題、いろんな工事実施上の課題、リスク、それから法的手続、いろいろありますが、
(140ページ)
法的手続の問題として、仮設建築物の撤去、新築、環境アセスメント、埋蔵文化財、土壌汚染というのがあります。
 仮設建築物の撤去、新築について、建築基準法当局の考えも、ある意味いただいております。ただ、今の状態をどうするのかと、先ほど豊洲に移るについても半年以上1年くらいかかるということを考えると、その間、ずっと協議しているというわけですから、協議していればいいのかという。あるいは、そうじゃなくて、築地は営業をとめられないから、特例になるのか。
 いずれにしても、今の状態をどういうふうに考えるのかというふうに聞いておりますが、これは、現在も協議しているという言葉しかない。協議しているで3カ月たっていますから、そういうはっきりさせないということなのかなという気もしないでもない。
 それから、環境アセスメントについては
(142ページ)
東京都も、多分ほかの地方自治体や国の環境影響評価制度とは異なる運用をされている、独自の運用をされているということは御存じなんだろうと思います。
 ああいう今の東京都環境影響評価条例のような書き方で、リプレースメントで面的開発についてやれと言っている自治体はほとんどないんだと思いますし、国もそんなことはしていない。独自の解釈による運用です。
 他の地方自治体はどういうふうにしているかというと、リプレースメントを条例の対象にするときには、環境影響評価審議会にかけて審議して、その上で条例を改正するなり、その対象事業の規則を改正するなりしています。
 それから、軽微変更も、役人が勝手に軽微変更だからアセスがいるとかいらないとか判断するのではなくて、その手続を条例に書き、そして場合によっては審議会にかけ、そういう慎重な手続をとります。いわゆる役人が勝手に決めるというのは裁量行政ですから、できるだけその余地をなくして、法令に基づく行政をやるというのが当然のことです。
 役人は自分がやってきたことを変えることができないという、その典型例だと思っておりますので、環境影響評価審議会、ほかの自治体に習ってお諮りになったらいかがでしょうか。
 国の場合には、内閣法制局に法律の執行、運用についてお伺いを立てて、重要な問題は顧問会議もあって、そういうところで判断を下されるので、そういうシステムの中であまり誤ったことはないと思いますが、東京都は、そういうシステムが十分じゃないということであれば、審議会にお諮りになって、みずからが行ってきた誤りを訂正されると。自分で直せないのであれば、そういうことをされたらいかがという提案をさせていただきます。
 以上で、2時間の範囲ということで議論させていただきました。何カ所か直さなきゃいけないところで、森高先生がおっしゃったところ、時松先生がおっしゃったところ。それから、佐藤さんと、それから竹内さんがお話しになったところはメモをいただいて、期間の話を入れてつくっていくという3点を修正するということ。
 もう一つ。

○時松氏 今の件に関係するんですけど
(115ページ)
表なんですが、移転して改修というA案とB案は、不確定要素の総計はほぼ工費が同じ800億なんですよね。それに対して、営業しながら改修のほうはA案とB案で、A案のほうは差が78億で、B案はほぼ400億、全面移転して改修するのと、ローリングしながら改修するので、A案は1割しか差がないのに対して、B案は5割差があるので、この辺は調整してもらわないと、容易に、この両方が同じような基準で見積もったとは考えにくいと思います。

○小島座長 これはいかがですか。

○時松氏 もちろん工期はB案のほうが2倍かかるので、時間に依存するコストだったら倍半分違っても構わないかもしれないんですけど、違い過ぎるような気がする。

○小島座長 じゃあ、お願いします。

○竹内氏 これは佐藤さんが見積もられているのは、今ある築地の建物の総面積に対して全部建てかえましたという大きさで積算されています。
 私のほうは、必要なここの建物と、ここの建物を変えたらどうだというところで、ほかの建物は壊しちゃってなくなっちゃっているので、もとになっている面積が違うので、この差が出てきているというふうになっております。

○佐藤氏 それもありますが、不確定要素の金額が全然違うんですね。私のほうでは180億くらい見積もっていますけど、竹内さんのほうはもう少し少額だったような気がします。

○竹内氏 少額です。70億。

○時松氏 その辺のバックグラウンドというか、説明していただけるとわかりやすいかと。

○佐藤氏 ですから、比較するのであれば、その事業費の1,209億と、878億、マイナス、若干の不確定要素。
 一番、私が疑問に思ったのは、今29万平米、築地の中にあるんですが、そのうちの今のまま、現存のまま使うという施設が約8万平米くらいあるんじゃないかと。これは私の想定ですが、ざっと見たところそこのくらいあるんじゃないかというふうに思いました。
 竹内さんの計画の中で整理するのが14万平米くらいですから、その差額が約7万平米くらいあるんじゃないかと思うんですが、それを全く潰しちゃっていいのか。機能的にいいのか。先ほど、規模が縮小されるということが考えられるので、それはなくてもいいんだよということであればいいんですが、そういうことも、規模算定も含めて、やはりちゃんとした計画を立てないといけないかなというのはあります。
 ということで、今の段階で予想されることとしては、お金に対しても期間に対しても、相当リスクを見込んだのが私の案です。
 逆に言うと、非常にベストなところを評価しているのが竹内さんの案ということで、当然このくらいの差は出ても当たり前というふうに考えています。

○竹内氏 楽観的といえば楽観的なのかもしれないですし、そこは明記して、どこにいくのかというエビデンスというか、ベースがわかっていればいいわけですね。わかりました。

○小島座長 そのほか、ありますか。
 それじゃあ、なければ、築地の地震のところと、それからさっきの入れかえのところと、それから115ページのこの表の前捌きの工期の話と、それから今の、金額がなぜ違うのかという説明を入れるという、この4カ所を修正する。
 メモをいただいて、修正をして、もう一度でき上がったものを皆さんにお返しをして確認していただいて、報告書を作成して提出をすると。そんな段取りでよろしいでしょうか。

 4.閉会
○小島座長 じゃあ、どうもありがとうございました。

○事務局 小島座長、どうもありがとうございました。
 本日の議題は以上となります。
 第一次報告書案の取りまとめに向け、4月から3度にわたり活発に御議論いただきまして、委員の皆様ありがとうございました。
 最後に、事務局より事務的な連絡をさせていただきます。
 本日の会議の議事録ですが、準備が整い次第、都庁のホームページに掲載いたしますので、あらかじめ御了承ください。
 以上をもちまして、第10回市場問題プロジェクトチーム会議を閉会いたします。どうもありがとうございました。

16時03分閉会

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